苗字にまつわる話

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

高校入学まもなくのこと。

国語の授業中に苗字の話になった。
「苗字で出身地がだいたいわかる」とか「明治以前、どんな仕事をしていたかが苗字によってわかることもある」とか・・・そんな話を先生がしていた。

俺の苗字はきわめて安易につけられたようなもので、その地域によくあるものだ。
仮に『ジャクソン』とする。
日本の苗字使うと問題ありそうだからコレでw

俺は入学したてにもかかわらず、なぜかその先生と仲がよかった。
そのため、先生がふざけて俺の苗字をバカにしたのよ。

「ジャクソンなんて、ほんと安易なつけ方だよなぁ。しかもここいらはジャクソンだらけじゃねーかw」

明らかに先生がふざけているのがわかったので、俺もふざけて「何言ってるんですか。ジャクソンは昔からある由緒正しい姓ですよw。しかもうちはジャクソンの中のジャクソン、いわばジャクソンの本家ですよw」

教室にいた誰もが笑ってた。
みんな冗談だってわかっていたから。

その授業があった次の日のこと。
家に帰ったら、母親が怪訝な顔をして聞いてきた。

母:「あんた、学校で何か変なこと言った?」

俺:「いや、特に言ってないけど・・・」

母「あんたのクラスに同じ苗字の子いる?」

俺:「あ~、いるな。それがどうかしたの?」

母:「その子の母親から電話があったのよ。『御宅はジャクソンの本家なんですか?お子さんが学校で言っていたそうなんですが、』って」

俺:「マジで・・・?国語の授業中に苗字の話になったんで、ふざけて言ったけど・・・」

母:「冗談でもそういうことを言うのはやめなさい。その子の母親が『我々はジャクソンの本家を探してます。冗談だとは思ったんですが、もしやと思って電話してみました。もし、本家の情報をお持ちでしたら教えてください』って言ってきたのよ。ちょっと怖いんだけど」

俺:「・・・・・・わかった。冗談でもやめとく。しかし、世の中にはいろんな人がいるもんだねぇ」

同じクラスのジャクソン君は、とっても真面目な感じ(というか暗~い感じ)のヤツで、仲良しグループも違ったので、まったく話をしたことがない。
といっても、わざわざ親に電話をかけさせるなんて、おかしいだろ。
国語の授業の後、直接俺に聞けばいいのに・・・。

母親とふたり、なんともいや~な気分になったのを覚えている。

このことは友達には言わないでおいた。
次の日、学校でジャクソン君に会ったが、俺も向こうもお互いに何もなかったかのように振舞った。

さらに一月ぐらいたった時のこと。
相変わらず俺は彼を避けていたが、ジャクソン君にもぽつぽつ友達ができたようだ。

その友達がジャクソン君にある質問をした。

友達:「なあ、なんでジャクソンはそんな変な髪形してるの?誰にあこがれてるの?何を目指しているわけ?w」

ジャクソンは見事な七三分け、いや八二分けといったほうがいい髪形をしている。
それだけならさほど変でもないのだが、両サイドと後頭部を思いっきり刈り上げている。
「ツーブロック」って言うの?そんな感じだ。
しかも、ポマードで髪をペッタリとなでつけている。

もし漫画「オメガトライブ」を知っているなら、梶秋一を思い出してほしい。
あるいは芸人の鳥肌実をググってくれ。

なぜ変な髪形をしているのか?

これは誰もがずっと思っていたことだった。
ただ、ジャクソン君はなんとも危ない暗いヤツだったので、誰も聞かなかったのだ。

教室にいた者、みながジャクソン君の答えを待っていた。
そっぽを向いて興味がないふりをしつつ。

友達:「何でそんな変な髪形なの?」

そう聞かれた瞬間、ジャクソン君はそれまで見せたことがないほどの勢いで「取り消せ!その言葉を取り消せ!変だと!?この髪型が変だと!?ふざけるな!この髪型はジャクソン家に代々伝わる由緒正しい髪型だぞ!ジャクソン家を継ぐ者は誰もがみなこの髪型にするんだ!さあ、今すぐその言葉、取り消せ!!」と、ジャクソン君は鬼のような表情で、とても冗談とは思えなかった。

質問したやつは真っ青な顔で謝罪した。
それ以降、ジャクソン君に話しかけるものはいなくなった。

俺は「うちがジャクソンの本家」などと冗談を飛ばしたことがどれほどヤバイことか理解した。
背筋が少しずつ冷たくなっていった。

その後は卒業まで特に何も起こらなかったが、ジャクソン君には絶対に近寄らなかった。

念のため言っておくが、うちのジャクソン家にはそんな髪型を継ぐ風習はない。

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