幽霊とか超常現象とかは出てこないんだけど怖い話を。
大学時代の友人Yの実体験談です。
YはH県の結構DQNな生徒が多いことで知られる高校の出で、結構夜中まで友達とつるんで出歩くなんてのは日常茶飯事だったらしい。
そのYが夏のある夜、暇にまかせて友人と二人で最寄りの『丑の刻参り』でプチ有名な神社に肝試し・・・というより空振り前提の呪い覗きに行くことにした。
Yの本当の目的は同行の友人の怖がり様をからかう事だったらしいが、実際に現地に行ってみると境内までの道には明かりらしい明かりも無く、かと言ってライトを点せば本当に呪いを行っている人がいた場合に気づかれてしまうので、Y当人も結構ビビリながら暗い中を進んで行った。(夜中に呪いの釘打ちが出来るぐらいだから、少なくとも当時はそれなりに民家から離れた場所だった模様)
紆余曲折(うよきょくせつ)の末、目的の場所に着くと、なんとそこには本当に白装束に身を包んだ女がいて、どうやら正にこれから儀式を始めようというところだった。
Yは結構オカルト関係の事が好きで、この手の呪い(厭魅)は儀式を他人に見られると効果が無くなる、或いは術者本人に呪いが跳ね返るといった話を知っていた上、何よりその女の格好から本気度が高い事が窺い知れたので、これはヤバイと思って即時撤退を決意した。
そしてその意思を伝えようとして友人に手をかけたところ、その友人は完全にテンパっていたらしく、途端に悲鳴を上げて我先に逃げ出してしまった。
この悲鳴に今度はYが驚いて立ち竦み、直ぐに我に返って境内の方を見ると、例の白装束の女が自分目掛けて物凄い勢いで走って来るのが見えた。
これにはYも完全にたまげて、友人に続いて逃げ出したのだが、如何せん、こんな事態は予想していなかったYはゴム草履を履いており思うように走れない。
それでも掴まったら何をされるか分からないという思いから必死に走り、どうにかこうにか振り切ることが出来た。
ただ、片方の草履は逃げる途中で脱げてしまい、帰途は随分と歩き難かったそうだ。
翌日、Yは自分を置き去りにして逃げた友人に怒りをぶつける一方、途中で脱げた草履が気になって仕方が無かった。
まさか犬でもあるまいし、その臭いを手がかりに件の女が現れるなんて事は有ろう筈も無いのだが、
そこは心にやましいものがある時の人間心理の常で、Yは友人を連れて再び例の神社へ草履を回収しに行くことにした。
無論、昼間の明るい内の事だったが、それでも警戒しながら捜索の足を進める二人。
しかし、何しろ夜間の、しかも必死の逃亡の最中で脱げたので、草履が何処らへんに落ちているものか見当もつかない。
結局、草履が見つからないまま神社に着いてしまった。
不思議なもので、こうなると好奇心が頭をもたげ、二人はあの女が儀式を続行したかどうかが知りたくなり、藁人形か何かが打ち付けられてはいないかと、草履そっちのけで境内の木に異常を捜し始めた。
そして結果として異常は発見された。
とある一本の木にYのゴム草履が滅茶苦茶に釘を打ち込まれて発見されたのだった。