老人の最後を見てしまった・・・

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

個人的に洒落にならなかった話ですが、もう何年も昔の話なんで書き込みます。
2002年のワールドカップが行われてた頃だったと思います。

東京に上京して大学に通う事になった俺は、都会にしては安い家賃5万のアパートで一人暮らしを開始する事になった。

まぁゴキブリは月に1回出るし、部屋も6畳でとても広いとはいえない物件だったけど、5階建の5階という点と、バルコニー(ベランダみたいなスペース?)が割りと広かったのが気に入ってた。

ベランダからの眺めは別によくはないけど、結構ひらけている。
けど目の前に、結構大きめの老人ホームのような建物があった。

その日、普段と変わらず学校にいって、夕方6時くらいに部屋に帰ってきた。
普段ならレポートとか、友達と遊び行ったりとかするもんだけど、その日は何だか眠くて、学校から家に帰るなり寝入ってしまった。

目が覚めたのが大体深夜0時過ぎくらい。
あー、変な時間に寝ちゃったなぁって思って、タバコ持ってベランダに出た。
部屋の中でタバコ吸うと、彼女が煙草臭いと文句垂れるし部屋の空気悪くなるしで、煙草吸う時は毎回ベランダで煙草吸う事にしてた。

寝入ってしまった事を後悔しながら髪をかきむしって煙草に火をつけた。

スーーッ・・・フゥゥゥーーー

煙を吸い込んで吐ききって、なんとなしに部屋から見える景色に目をやった。
老人ホーム、ずーっと先の方にはコンビニの光、あとは住宅街。

「ガラガラガラ」

音のする方に視線をやると、老人ホームの一部屋の窓が開いている。
深夜0時回ってんのに・・・今の音はあの窓が開いたからかな?
そう思ってその開いている窓をずっと見てたら、すぐに老人がニョキっと顔を出した。

僕の方には目もくれず、バサーっと部屋から何かを投げ出した。
ロープみたいなものだった。
老人は窓枠に必死にそのロープらしきものを結ぶつけてた。

脱走だ!!

直感的に思った。
老人ホームに入っている人でも、やっぱりこういう施設に入れられる事に嫌悪感を抱く人はいるもんなんだな、とか思ってるうちに老人は窓際でのロープを結ぶ作業を終了させたらしく、一旦姿を消した。

老人が老人ホームを脱出する瞬間・・・を目の前にするのだと思うと、なんとなく興奮してきてた。
老人はすぐに姿を現したかと思うと、あっという間に窓から身を投げ出し、首を吊った。

老人が部屋から身を投げて、ロープと窓枠の衝撃で「ガゴン」って鈍い音がしたんだけど、なんだか今でもその鈍くて重い音が忘れられない。

その時、僕はその老人ホームに向かって色々叫んだけど、結局何の応答もなくて、施設まで走っていって管理人がいると思われる玄関周辺をドンドン叩いて、泊り込んでいた人を起こして、助けようと救急車、警察も呼んでドタバタしたけど結局助からなかった。

次の日とかその次の日とか、ニュースになるんだろうなと思ってたけど、一切そのニュースがなかったのを目の当たりにして、こういう事は珍しくともなんともないのかな、なんて思った学生時代でした。

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