模倣犯

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

私が小学校3年生の時の話。

その日はたまたまオシャレしていて、私は赤のヒラヒラしたスカートにちょうちん袖のブラウスを着ていた。
学校が終わってトコトコと家路を急いでいたら後ろから車が来て、私の横で止まった。

車にはオジサンが一人乗っていた。
ダッシュボードの上にはカバーを取った文庫本が一冊、置いてあった。
オジサンはめがねをかけて、中年くらいだった。

オジサン:「保健所の者なんだけど、君の家で検査があるから、急いで家に帰ろう。さぁ、車に乗って」

宮◯勤の事件の大騒ぎが落ち着いて、その模倣犯がちょくちょく出始めたような時期であった。
あまりのオジサンの言ってることが素っ頓狂だったので、小学三年生の私もさすがに引っ掛からなかった。

私:「いや、いいです」

そう言ってスタスタと通り過ぎた。

今度はオジサンは車を私の前に回りこんで止めた。

オジサン:「急ぐから!乗って!」

今にも車に引きずり込まれそうな勢いだった。

どうしよう・・・と周りをきょろきょろすると、自分の100メートルほど前に大して親しくもない同級生が歩いていた。

私:「かずよちゃああああぁああん!!」

そう叫んで私はその友達に走って行った。

友達(かずよちゃん)は何事か、と目を丸くしていた。

私が走り出すと、車は全然逆方向に向かって猛スピードで走っていった。
大したことはないんだけど、ふとした瞬間になんとなく思い出して、怖くなる。
少しタイミングが悪ければ、あと少し私が幼かったら・・・。

本当に良かった。

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