栽培されていた植物は

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

オレが小学校低学年の頃の話。

うちの近所に怪しいばあちゃんが住んでいた。
そのばあちゃんは、とある信仰宗教団体の地域リーダーみたいな立場だったらしく、頻繁に人を集めては夜通しお経を唱えたり、絶叫したり、その宗教が発行している本の購入をしつこく勧めてくるので、近所でも、ちょっとした嫌われ者だった。

あるとき、うちに近所のオヤジ連中が集まってきて、なにやら話し合いをしていた。
どうやら、その怪しいばーちゃんの話題らしく、「警察に通報する」とか「今度抗議をしに行こう」とか、穏やかではない雰囲気だ。

あとから、オヤジに「何の話してたの?あのばーちゃん何か悪いことしたの?」って聞いたら、「あのおばーちゃんの勝手口の横に生えている草あるだろう?あれはおばーちゃんにとっては神様のに捧げる大事な植物らしいんだけど、触ると手が荒れる草だから、植えないようにお願いしに行くんだよ。この辺は、子供がよく遊ぶ場所だから、何かあったら大変だろ。お前もあの草は触っちゃ駄目だからな。手が大きく腫れちまうぞ」ということだった。

その頃は「たかが草植えたくらいでなんだかばーちゃん可愛そう」と思ってたが、大人の世界は色々あるんだなと、子供ながらに納得して特に何も気にしていなかった。
すぐにその草は無くなり、オヤジもそれ以降そのことは触れなかったし、ばーちゃんも普通に生活していたので、何も気にすることなく年月が過ぎ去った。

やがてばーちゃんも亡くなり、俺も社会人になって、久々に帰郷した際に、ふと思い出して、「そういえばあのときの草ってなんて植物だったの?」とオヤジに聞いてみた。
すると、オヤジは、こう言い放った。

オヤジ:「ああ、あれは大麻とトリカブトだよ」

オヤジ:「警察に通報しようと思ったけど、あの会合以降、近所に怪しい人がうろついたり、いたずら電話がかかってくるようになったから、通報やめようということになった。結局、ばーちゃん自ら草を捨てたらしい。あの件はあまり触れないほうがいいな。」

その二年後、地下鉄霞ヶ関駅で猛毒ガス大量殺人事件が発生した。

ブログランキング参加中!

鵺速では、以下のブログランキングに参加しています。

当サイトを気に入って頂けたり、体験談を読んでビビった時にポチってもらえるとサイト更新の励みになります!