東京湾に沈めてやるからよ

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

明日は日曜日で仕事も休という土曜の夜。
今日も休みだったわけだが、朝からパチンコして、5万円も負けてしまった。
明日の競馬の資金稼ぎと思ったのが間違いだったようだ・・・。

「給料日まで一週間か・・・また前借りするか・・・」などと考えながら、俺はテレビを観ながらくつろいでいた。
親から継いだ一軒家に独りで居るが、その親も亡くなって今は居ない。

その時家の電話が鳴った。

相手:「さいとうさんのお宅ですか?」

俺:「いえ、違いますよ」

よくある間違い電話だった。

一分ほど経った頃、また電話が鳴る。
先ほどとは違う声。

相手:「よしおだけど、たかし?」

俺:「番号間違ってますよ」

またかよと思いながら電話を切る。

そして、また電話が鳴った。
少し苛立ちながら取り「はい?」と俺は不機嫌な声で出た。
今度は女の声。

相手:「あの~、たなかさんのお宅じゃ?」

俺:「なんかの嫌がらせ?いい加減にしてくれるかな。」

叩きつけるように電話を切ったが、間髪いれず電話が鳴ったので、取ると言ってやった

俺:「いい加減にしやがれ、バカヤロー!しつこいと警察に言うぞ」

すると、ドスの効いた声が返ってきた。

相手:「警察?上等だ!うちから100万も借りてて、逃げられると思ってんの?」

俺:「・・・・・・・・・・・・」

相手:「今から行くから待ってろ。す巻きにして東京湾に沈めてやるからよ」

俺:「いや、違うんで・・・す・・・」

ツーー・・。
電話が切れた。

震える手で受話器を置く・・・。
腹から力が抜けていく感じがして、膝がガクガクした。

立っていられなくなった。
全身から汗が吹き出し、寒さを感じてくる。
頭が真っ白で逃げるという考えも浮かんでこないでいた。
ただ電話を見つめたまま、フリーズしていたのだった。

それからしばらくしてチャイムが鳴った。

「ピンポーンピンポーンピンポーン」

ビクッ!

その音に俺は我に還った。

ドアノブが「ガチャガチャガチャ」

鍵は掛けてある。

ドアをドン、ドン、ドンと叩きながら、先ほどのドスの効いた声が聞こえてくる。

「居るんだろ?開けろコラ!」

早過ぎる。
どうやら近くまで来て、携帯から電話してきてたようだ。

「おいお前、逃げられないように裏へ廻れ」

二人以上で来たのは確実になった。

「開けろや!」

ドン!ドン!ドン!

腰が抜けて立てない・・・。
少しでも音から遠ざかりたくて、這って押し入れに逃げ込んだ

ドン!ドン!ドン!

耳を塞いでいても聞こえてくる。

トゥルルー。
その時、電話が鳴った!

トゥルルートゥルルー。

出ないでいると、留守録に繋がる。

「もしもし、よしだだ。居るんだろ?悪かったな。今、人は間違い電話を何度も受けると、どのように心理変化していくか、迷惑がらずに何回まで冷静に対処出来るか、心理学上のデータ集めてるんだっ」

俺:「絶対に次会ったらぶっ殺す!!!」

怒りながら安堵し泣いていた・・・。

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