治る気配がない傷

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

つい何日かまえの話だけど。

仕事が終わって小腹もすいたし、なんか軽く食べれ物を買おうと思ったのね。
ちょっと歩けばコンビニもあるんだけど、面倒だから目の前のスーパーに入った。

パンと紙パックジュースを買って店を出る時、杖ついたお婆さん二人が店に入ろうとしてるのが見えた。
このスーパーのドアは自動ドアじゃなくて手で押したり引いたりして開けるタイプのドア。
結構重たい。
杖をつきながらこの重たいドアを開けるのは大変だな・・・と思い、私もちょうど店を出るところだったのでドアを自分側に引いて開いて、お婆さん二人を先に店の中に通したんだ。

私がドアを開けているのに気がついた二人はヒョコヒョコと急ぎ足になったので、何だか逆に申し訳なくなった。
姉妹なのか友達なのかはわからないが、片方は日傘でもさしてお散歩してそうなお洒落なお婆さん、もう一人は畑にいそうないかにも田舎のばあちゃんって感じのお婆さん。

二人は店に入ると突然私の手を取り(右手をお洒落なお婆さんが、左手を田舎のばあちゃん風のお婆さんが)「ありがとう、ありがとう」と言って手を握ってきた。

最初は「どういたしましてw」って感じだったけど、手を握ってる時間がやたらと長い・・・。
お婆さん二人は私の手を握ってる間ずっと怖い位の笑顔で「ありがとう、ありがとう、ありがとう・・・」と同じ口調のまま繰り返していて、なんだか気味が悪かった・・・。
そしたら二人が急に会話をし始めた。

会話する時って普通はお互いの方を向いて話すと思うんだけど、この二人はじっと私の顔を見て会話してた。
内容はうろ覚えだけどこんなだったと思う。

▲=お洒落な方
■=田舎っぽい方

▲:「若い子にも優しいこがいるもんだね。」

■:「若い連中みんなこの子みたいに優しかったらねぇ。」

▲:「みんな優しかったら私らもあんな思いしなかったのにね。」

■:「あいつらの話はやめてくれって言ったしょや。」

▲:「そうだね。悪かったね。」

■:「何回言ったらわかるのさ。あんたは昔から鳥頭だ。」

▲:「それよりほら見てよ、真っ白で柔らかくて良いわねぇ。」(私の腕を擦りながら)

■:「若い頃の私のほうがもっとすごかったしょ。」

田舎っぽい方のお婆さんはもう私の手を離してるんだけど、お洒落なほうは相変わらず私の手を握ったまま。
しかも段々目が虚ろになってきて、田舎っぽい方の話なんてほとんど聞いてなくてどんどん話すことが訳のわからない内容になってきた。

▲:「良いわねぇ、若いって良いわねぇ・・・私も戻りたいわ、若かったらあんな思いしなかったのに・・・。」

■:「だからあの話はやめてくれって言って・・・。」

▲:「あなた(多分私の事)若いって良いわねぇ、ほら・・・柔らかくて美味しそうね、男の人もきっと嬉しいわ。」

■:「悪いねお姉ちゃん、ほら○○(多分お洒落な方の名前)いくよ。」

▲:「私が男の人なら※¥△@&(聞き取れなかった)良いわねぇ、良いわねぇ、羨ましいわ、私もあなたみたいに若かったら・・・。」

■:「○○!いい加減離してやんな!ほら急ぐんだからいくよ!」

▲:「待って、待って今ね、すごく大事だから、すぐ済むから。」

田舎っぽい方がお洒落な方の方を掴んで連れていこうとすると、お洒落な方は田舎っぽい方を突飛ばして突然私の腕に噛みついてきた。

あまりにも突然で、一瞬痛いかどうかはよくわからなかった・・・。
とにかく恐ろしくてありったけの声で何か叫んでたら店員達がすぐに駆けつけてきてくれた。

それを見るとお洒落な方はさっきまで杖をついてたのが嘘みたいに走って逃げ、私と尻餅ついたまま立ち上がれない田舎っぽい方のお婆さんが残されて、店員も何が起きたのかわからず呆然としていた。

噛まれた腕は所々(多分歯が抜けてない部分)血が滲んでる。
お婆さんは店員の手を借りて立ち上がるとふらつきながら私の所に来て「すまなかったね、アレがああなったのは私のせいなんだ、すまなかったね。」と言って頭を下げると店から出ていってしまった。

血が滲んだ場所は女性の店員が手当てしてくれたけど、1日もあれば瘡蓋になるくらいの浅い傷なのにまだ少しも治る気配がない。

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