検体回収の怖い話

カテゴリー「怨念・呪い」

土曜に昔の仲間に会って思い出した話をします。

皆さんは、検体回収という仕事を知っているでしょうか?
主に検査会社などの仕事で、病院などを廻って、外注検査に出す血液などを回収してくる仕事です。
大きな病院なら検査設備が整っているのですが、それでも特殊な検査になると、たいがい検査会社に外注依頼します。
中には警察署などから、薬物検査や変死体などの検体を回収してくる事もあります。

私はとある大手の検査会社に、営業として勤務しておりました。
回収に赴くのは主に女性です。
病院というのは難しい人が多い上、特に気難しい人が多い検査室などは、神経の細やかな女性のほうが喜ばれるからです。

その年、とある大病院の特殊検査を落札しました。
はじめは私が回収にお邪魔していたのですが、だいたい内容もつかんだので、一人女性を新規に採用しました。

彼女の名前を仮にAさんとすることにします。

Aさんは、初めこそ慣れない検査用語などで苦労していたようです。
しかし物覚えの良い人で、2週間後には一人で回収に行ったり、検査報告書のチェックが出来るようになりました。

2ヶ月ほど経った頃、いつものように検査報告書をチェックしていたAさんが、私のところにやってきて、「ちょっと心配な患者さんが」と言ってきました。

私はてっきり検査報告書に不備でもあったのかと思い、聞き返すと、「この患者さん・・・私と同じ年なのに白血病みたいなんです」と言うのです。

こういうことはたまにある事で、例えば子供のいる人などは、「この子3歳なのにリウマチで可愛そう」とかいう話を、雑談しているのを耳にしたりします。
私は、『ああ彼女は優しいんだな・・・』、と思い、その場は彼女を慰めて終わりました。

ところが・・・。
白血病というのは、化学治療のクールごとに成果を見るために、マルクをして染色体検査や細免検査などをして、陽性率を見たりします。
また、感染症にかかる場合もありますので、度々検査に出るのです。
他にもそういう患者さんがいます。

なのにAさんは、その患者にまるで”とりつかれたみたい”になりました。

その患者の検体が出るたびに、そわそわしたり苛立ったりするようになりました。
何度も検査室に報告日を問い合わせたり、報告書が来る日は誰より早く来たりするのです。
最も、これは後から同じ回収班の女性から聞いたことで、当時の私は気づかなかったのです。

そのうち彼女は、帰着予定時間を過ぎたり、明らかに以前と異なる様子になりました。
体も痩せ笑顔もなくなり、無口になりました。

そんなことが続いて半年もたったころ、彼女が突然無断欠勤したり遅刻したりするようになりました。
出勤しても一言謝るだけ。
私は、彼女がこの仕事に向いていないのではないか?と上司に話し、辞めて貰う方向を取る事になりました。

あの日も彼女が無断欠勤をしたので、私が回収にいったのです。

帰りに内科の医師に、「病理検査について聞きたいので」と言われて、病棟に立ち寄りました。
そうしたら、やせ細った体の彼女が、NSステーション前のある個室で、ぼーっと立ち尽くしているのを見たのです。
一瞬声をかけようかと思いましたが、怖くてぞっとして、声をかけられなかったのです。
最初に採用した時の彼女とは、まるで異なっていました。

NSステーションで医師と話しながら、心は上の空でした。
彼女には二度と会いたくない、辞めてもらおうと心から思いました。

帰り際、彼女の立ち尽くしていた個室の前の名札を見ると、例の患者さんでした。
やっぱりと思うと同時に吐き気がこみ上げて来て、トイレで吐きました。
その後、彼女にはすぐに辞めてもらいました。

それからしばらくたって、その病院の精神科から出た検体に、彼女の名前がありました。
それからなおしばらく経って、その病院の中庭に飛び降りて死んだ患者さんの話を聞きました。

それはAさんと同じ苗字・・・それ以上は怖くて聞けませんでした。

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