俺は体調によって視える時がある。
条件は確定できてないけど、飲んだあとの帰り道。
ちょっと体が冷えて酔いが少し覚めたときに視やすい。
初めての時は大学の新歓で飲んだ時だった、もう10年以上前になる
その日は終電まで飲んで名古屋から岐阜方面へ向かう電車に乗っていた。
終電でも名駅はまだそこそこ人がいたんだが、進むと人も少なくなり、少し寂しい車内で音楽を聴いて座っていたら変なやつが隣の車両から移動してきた。
白いミニのワンピースを着た細身の女だったんだが、異常に身長と髪が長い。
180以上あってその腰までストレートの黒髪が伸びてた。
特に違和感を感じたのは髪で全くツヤが無くて、ただただ真っ黒だった。
その女はとりあえずいちばん扉の近くに座ってたおじさんの隣に座った。
おじさんは新聞を読んでいたんだが、その横顔をガン見してる、正面にまわったり下から見上げたりしばらくおじさんの顔をジロジロ見て席を立とうとしたときにふと視線が遮られた。
俺の前に座っていたおばさんが俺の前に立って女が見えないようにしてきた。
おばさん:「やめとき、あれは最悪だ。こられたらはがせないよ」
俺はとりあえず聞き流してまた女を見ようとした。
おばさん:「だからやめとき!、目があったら終わりだよ!」
今度は強めに言ってきた
女はおじさんの正面に座ってたお兄さんの顔を見てるようだったが、おばさんの声に驚いて俺が「え?」と視線をおばさんの顔に移すときに一瞬女と視線が交差した。
「いわんこっちゃない」おばさんは顔をしかめて呟いた。
女が大股で近づいてくるのが見える・・・。
やはりデカイ・・・天井にとどきそうだ。
おばさんは小声で「無視しろ。あんたには何にも見えてない、見えてることがバレたらおわりだよ。でも目をつぶったらダメだ、視界にあいつをとらえておくんだ、諦めていなくなるまで。」と、早口でしゃべると隣に座った。
隣に座ったおばさんに向いて意識を正面に向けたら・・・そこには女の足があった。
思わず声をあげそうだったが、必死に飲み込んだのを覚えてる。
いつのまにか音楽が止まっていたのでプレーヤーを構いつつ視線の端で女の足を見ていたら、いきなり女がしゃがみこんで目の前に女の鼻から下が見えた。
肌はガサガサでコンクリートみたいだった。
白いワンピースには所々茶色いしみがついている。
なんとなくカビ臭いような臭いが臭ってきた。
俺は視線はプレーヤーから動かさずに全神経を女に集中していた。
女はいろいろな角度から俺の顔を見ていた。
俺は全力で平静を装ってプレーヤーをいじっていた。
しばらくしたら駅について扉が開いた。
別の電車の通過待ちだったのでしばらく止まっていたんだが、女がいきなり立ち上がって扉に向かった。
今までゆっくりめの動きだったのにその動きはかなり早かったので思わず視線を上げてしまった。
女は扉の場所で止まっていた。
その先には駅前の明かりが見えたんだが、数台並んでいたタクシーの先頭の運転手がこっちを見ていた。
その運転手に女の事が見えてるかどうかはわからないが、女は間違いなくその運転手を見ていた。
そして大股で電車を降りてホームを歩いて行った。
俺が一安心して息を吐くと、隣のおばさんも大きな息を吐いた。
おばさん:「久しぶりにタチ悪かったわ。たぶんあいつは電車に乗って方々を渡ってる。」と言った。
俺は「あのタクシーには見えたのかな?」と聞いてみた。
おばさん:「わからん。でもあいつはたぶん駅から出られない、縛られてる。」
俺:「出られたら?」
おばさん:「そんなのどうなるか悪かったわかるら?」
そんな話をしていたら次の駅に着いておばさんは立ち上がった。
おばさん:「いいもんか、いくないもんかはそのうちわかる。まぁ見えるのがわかっちまうとどっちも面倒だけどな。」
そう言っておばさんは降りて行った。
そんな感じで決まって飲み会の後に視ることがたまにある。
おばさんの言うとうりに見えない風を装うことも今では余裕になってきた。
少なくとも俺が視る時は透けてもいないし、ぼんやり光ってもいない。
また視えたと思って実は普通の人って時もあると思う。
とりあえず今の俺は街にいる人をじっと見るのが苦手だ
ちなみにJRだ。
女は八尺様とアニメうしおととらのとわ子を足したような感じ。
八尺様ととわ子を初めて見た時はマジで震えがとまらんかった。