首に纏わるスポット

カテゴリー「怨念・呪い」

高校からの付き合いのある先輩、Kさん、Jさんとの体験。

大学一回の夏の話。
その年の春、私は都内の大学に受かり、高校からの付き合いのある先輩Kさんと同じ学部に通うことになった。
やっと大学生活のリズムを掴んできた頃、Kさんが私に相談があると言う。
正直、面倒くさかったが、明るく活発だったKさんのしおらしい頼む様を見て、不覚にも興味を持ってしまった。
それが間違いだったのだが・・・。

私がどうぞと言うと、Kさんは開口一番に「Jがオカシイ」と言う。

知っている名前だった。
Jさんも都内の大学に通っており、同じ高校出身で、同じ部活で汗を流し、よく可愛がってもらった先輩だった。
健全で、健康で、いつも笑顔を絶やさなかったJさんの何がオカシイのか、想像もできなかった。

Kさんの話はこうだ。
JさんとKさんは仲が良く、進路は違ったが同じ都内に住むという事でずっと交流があったらしいが、進学してしばらくして様子がおかしくなったという。
どうオカシイのかというと、ドライブしていると何も無いところで急ブレーキを踏む、何も無いところをジッと見つめる事が多々ある、急に驚いたりすることがあるなど、とにかく挙動が不審で、最近はやつれて目の下にくまができて見ていられないのだと言う。

正直、KさんとJさんが一緒にドライブしてる事に一番驚きつつも、そんな事言われても私にはどうしようもない。
心配はするが、頭の医者でも、ましてやそんな専攻でもない、力になれないと伝えた。

しかしKさんはそれで良いと言う。
Jに何が起きているのか、本人に聞きたいが、一人では怖いので付いて来て欲しい、それだけでいいと言う。
ここまで必死に頼まれたら、私には断る事はできなかった。

約束の日、講義が終わった後の夕方に大学の近くのファミレスで落ち合う事になり、Kさんと一緒に向かった。
Jさんは先に入っていると言う。

遠目にJさんを見つけると、向こうもこちらに気づき手を振った。

私:「お久しぶりです」

Jさん:「久しぶり」

確かにやつれている。

久しぶりに会った先輩と他愛もない話でもと思った矢先、Kさんがいきなり本題をぶつけた。

Kさん:「あんた、最近オカシイよね。どうしたの?」

最初は何の事かわからないという様子だったものの、Kさんの気迫と、私を連れてきた意味を察したのか、こんな事言うと変人だと思われると思って誰にも相談しなかったのだと前置きをしてからJさんは話をしてくれた。

大学に入って間もなく、知り合ったばかりの友人達と肝試しに行ったのだと言う。
特定と、近隣住民の迷惑になるといけないので伏せるが、首に纏わるスポットで、仲間とふざけているうちに、注連縄を切ってしまった。

その場では何も起きなかったが気味が悪くなり解散。
帰路に着き寮の風呂で頭を洗っている時に鏡を見ると背後から女が覗き込んでおり、それを見て失神した。

それからというもの、所謂視える体質になり、それも生きている者とこの世の物でない者との区別も付かない程。
急ブレーキやその他諸々もそのせいだと言うのだ。

背筋が寒くなってきた・・・。
そしてJさんはこうも言った。

Jさん:「最近までまいっていたが、もう慣れた。今もきっと俺の背後に居るが、無視してやる」と。

その発言が本気なのか、強がりなのか判断し兼ねていた私は、先輩の背後の大きなガラス窓に無数の手形が付いていることに未だ気づいていなかった。

以上。

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