私はいつか首を吊って死ぬ

カテゴリー「怨念・呪い」

私の姉は首吊り紐に付きまとわれている。

いつか、首を吊りそうな気がしてならない。

今も続いている話だ。

私の姉は子供のころに主不在の首吊り紐を見つけて以来、ずっと首吊り紐に付きまとわれている。
最初にそれを見つけたのは、姉が小学校五年生の時だった。

学校にあった、懸垂用の背の高い鉄棒にロープが結んであったのだ。
それは厳重に鉄棒に結びつけられていて、だらんと垂れた先が、人の頭が通りそうな大きさのわっかになっていた。

誰の目にも首吊り用の紐に見えた。
気味悪がった姉は先生を呼び、首吊り紐は先生によって撤去された。
学校は悪質なイタズラとして、全校集会で注意を促した。

二度目に姉が首吊り紐と出会ったのは、半年後に家族旅行で行った石川県だった。

間違えて入った道に立っていた電信柱。
その足場ボルトから、首吊り紐が下がっていた。
これは私たち家族も見た。
縁起でもない、と両親が話していたのをぼんやり覚えている。

三度目は、それからさらに一年ほどあと。
姉の友達の家の近くにあった、公園のブランコだった。
ブランコとブランコの間に、しれっと混じって首吊り紐が揺れていた。

それからも、姉の行く先ではそんなことが続いた。
首吊り紐はなんの前触れもなく、規則性もなく、姉の前に現れた。
だいたい、年に1回か2回。
多いときは、3回。
それ以上は出たことがない。

特に実害といえるほどの害はないのだが、ものがものなので気味が悪い。
とにかく見つけると気分が悪いが、回避のしようもない。
それに、姉曰くただ現れるだけではないらしい。

「いつもね、私が一番に見つけるの。それでね、見つけた瞬間、紐がぴんと張って、ぶらんぶらんって揺れるんだよ。あれがさ、今まさに誰かが首つったみたいで、嫌なの」

もちろん、そこには首吊り紐が下がっているだけで、誰もいない。
にも関わらず、首吊り紐はそんな動きをしてみせるという。
そして揺れが収まると、ぴんと張っていた紐はふっと緩む。
それがまるで「次のかた、どうぞ」と言われているような気がしてくるのだそうな。

「高さが、また嫌な高さなんだ。いつも、私の頭よりちょっと上にわっかが来るんだよ。・・・・・・私の身長に合わせたみたいに」

姉は現在、三十代半ばである。
首吊り紐との付き合いも、二十年を越えている。
これだけ長いこと続けば、いい加減慣れた。
やっぱり気分は悪いけど、前ほど驚かなくなったよ、と姉は言う。

だが私は、数年前に姉がぽろりと溢した言葉を、今も覚えている。

「もしも、どうしようもないほど嫌なことや辛いことがあった日に、あの紐が目の前に現れたら、そのまま首を吊ってしまいそうな気がする」

姉は昨年結婚した。
子供が欲しいとのことで、妊活真っ最中である。
私も姉の子供には会いたい。

しかしマタニティブルーというものが頭をよぎって、不安でもある。

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