電話で除霊

カテゴリー「怨念・呪い」

俺が24才の頃の話。
俺の実家はちょっとした関係で、ボンサン(お坊様)の知り合いが多い。
出張途中のボンサンがウチに挨拶に立ち寄り、ウチは食事や酒、寝床を提供したりしてた。
ボンサンの多くはよく酒を飲み、話が上手で楽しく、声も渋くて耳に心地よい。
ウチでは母さんが一番信心深く、ボンサン達の来訪を歓迎していた。
俺もボンサンと飲む機会は多かった。

さて、俺の姉は昔から、純粋というか、感受性と思い込みの強い人だった。
その頃姉ちゃんは、お経に凝っていた。
自室で夜な夜なゴニョゴニョと詠んでいる。

何でお経詠んでんの?と聞いた。

姉「だって可哀想だから」

俺「何が」

姉「先月、猫の死骸を見たから。気持ち悪くて触れなかったから、ごめんって謝ってんの」

1ヶ月もかいっ。
呆れたが、放っておいた。
姉ちゃんの場合、趣味とか遊びではなく本気だ。
だから止めても続けるのは知っている。

家族皆で放っておいたら、翌月もやっている。
聞けば、可哀想の対象が増えていた。
ニャンニャンワンワン・・・。
そのうち、父さんも寝室でゴソゴソ始めた。
般若心経だそうな。

多感な父さんは本やらCDやら買い揃え、姉ちゃんよりマメに詠む日々。
でも、ウチは前からお経慣れしてるので、あまり気にならなかった。
お経を詠むのは良いことだ、と母さんスルー。
俺も、多少うるさいな、と思うだけでスルー。

そんなある夜、母さんに電話があった。

「あらー!お久しぶりです!」

和やかな挨拶の後、しばらく真剣に話し込んでいる。
と、母さんが姉ちゃんに電話を渡した。

姉ちゃんは少し話して子機に転送、自室に引っ込んだ。
浮かない顔の母さん。
どしたの?と聞く。

母「あんたも知ってるでしょ、ボンサンのAさん」

俺「あぁ、何度か飲んだ、優しそうな人。電話、Aさん?」

母「うん。それがね・・・」

聞けば、Aさんの用件は、Aさんの奥さんが至急、姉ちゃんと話したい、という。
えっ、と思った。

Aさん曰く、「僧の身でありながら未熟者にて恥ずかしい限りだが、私は家内を信頼しております。また家内をよく知る○○さん(ウチ)のご家族に健やかであってほしいと思う。悩んだが、家内の話を聞くだけ聞いて頂けないか。」と。

はっきり言って話が全然見えてこない・・・。

実はAさんの奥さんはかなり霊感が強い。
地方のボンサン数人、つまり身内で飲むと、たまにその話題が出る。
だがそれは暗黙の了解で、内緒の話。
Aさんも自ら言いふらすことはしない。
そりゃそうだ、ボンサンでも何でもないただの専業主婦が、霊を見る、聞く、あまつさえ鎮めることができ、極々たまに、やむを得ずそっち方面の相談を受けたりなど・・・なんてことは、世間的に僧たる夫の徳や業をけし粒にする可能性がある。
Aさんや奥さんの鎮魂は、やってることは同じだが社会はそう見ない。
だから奥さんは極力何もせず何も言わず、専業主婦に徹している。

その奥さんが突然、姉ちゃんに話があるという。

「ちょっと様子を聞くだけですから」と付け加えたAさんだが、母さんは既に深刻。

姉ちゃんは30分くらい話しただろうか。

居間に降りてくると、「お経やめなさいって」

あっけらかんと言って子機を母さんに渡した。
事情を聞くと・・・。

姉ちゃんのお経は既に幾つかの善くないものを集めており、まだまだ増えるという。

姉「それはダメなことなんですか?」

奥さん「いけません」

姉「では、どうすれば良いのですか?」

奥さん「お経をやめて、さようならって思うと良いですよ。姉子さんの優しい気持ちは、皆にもう十分伝わってるの」

姉「はい・・・」

奥さん「だから、今度は元気よくお別れしてあげるといいですよ。今、ちょっとやってみる?」で、しばらく2人でさようなら、元気でね、と口に出してお祈りしたそうな。

姉「もうお経やめるー」

良くも悪くも素直な姉ちゃん。

俺「えーと、その、集まっちゃったやつは?どうなるの?」

姉「電話してる間にみんな居なくなったって」

すげーなおい。
電話で除霊かい。
つかその前の霊視すげーな、距離関係なしでこっちの状況わかるんか。
つか俺の隣の部屋にそんなのワサワサ居たんかい。

お礼を言って電話を終えた母さんが、姉ちゃんに、良かったね、気を付けようね、Aさん夫婦に感謝しようね、と。

だが母さんちょっとションボリ。
信心深いだけに、お経もいろいろ、思うところもあろう。

俺「まぁ、何事もなくてよかったじゃない」

母「姉子はいいのよ」

俺「・・・・・・ぁ」

もう1人居るじゃん、般若心経!

俺「父さんは!?つか今2階でしょ、やってるよ今っ」

母「それは・・・、いいんだって」

電話を終える前、母さんが父さんについて聞くと、奥さんは言葉を濁しに濁したが、要するに。

父さんのお経は信心が極めて弱く(つまり無い)、善いも悪いも何も呼んでない。
だから放っておいてよし。

・・・父さん・・・。
でも奥さん曰く、それでも良いらしい。
信仰の自由。

父さんはしばらくしたら、お経をやめた。

父「姉子みたいになったら大変だからなぁw」

いやいや、あんた飽きただけでしょう、というのが3人の共通見解。

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