わたしの実家は、東北地方のA県のとある片田舎。
毎年冬になると雪がどかどか積もる、いわゆる寒村部です。
そしてこの村には、わたしがずっと小さい頃から村の人みんなから怖がられてきたある家があるんです。
わたしの家族も含め村の人は「火事の家」と呼んでいます。
その家では、火事の起こる頻度がハンパじゃないんです。
というか、必ず火事が起こる家として有名なんです。
わたしの家からは自転車で15分くらいでちょっと離れたところにあるんですが、中学生の頃、友だちと何回か野次馬に出かけた記憶があります。
建物自体は相当古く、この地方ならどこにでもあるようなトタン屋根の家屋です。
ただ不思議なのは、火事があっても全焼することは絶対になくて、せいぜい半焼とか、ボヤ止まりだったりするんです。
住んでいる人もその時によってまちまちだったと聞きました。
なので、住人がどうで、とかの可能性はたぶんないです。
そのうち、村の人がお金を出し合ったのかなんなのか家の横に小さな祠?(神社の外に置いてあるようなやつです)が建ちました。
あんまり覚えてないけど、地鎮祭とかはやらずに、ある日いきなり、取ってつけたみたいにできてた、って感じだったと思います。
で、その家で、この前の年末に、また火事があったらしいんです。
いえ、正確には、その家があった場所で。
学校があるので、田舎に帰るのは年に2度しかないんですけど、その間に、家があった場所に村営の団地が建ったらしいんです。
もう何年もその家のこととか忘れてたし、友だちとの話にも出てこなくなっちゃったので、聞いたときには「あーそういえば」くらいにしか思いませんでした。
ただ、その団地を作ってるときに、例の祠?を、いっしょに取り壊しちゃったらしいんです。
火事があったのは、前にその家が建っていた場所とまったく同じ場所で、ゾッとしたのが、出火したのは前に祠が建っていた場所だったんだそうです。
以上、消防士の友だちから聞いた話です。
ふつうだと田舎の火事って大事件なので、そこいらじゅうで話題にされるはずなんですけど、両親やおじいちゃんに聞いたところ、みんな一様にしぶーい顔してたのが不気味でした。