友人Aとその姉(B)の話。
私はある中高一貫校の高校編入で、Aはその中学組。
Bは3歳上で私が高校にいた頃は卒業していたけど、同じ学校卒。
Aは「見える」人だけど、そのことを知ったのは最近。
そういう話を自分からする子じゃなかったから、社会人になって再会し、一緒に飲んだ時に初めて聞いた。
有名だったのはB。
当時のクラスメイトから聞くところによると、「見える」系の話を平気でする人だったらしい。
「化学準備室には女性の霊がいる」等と大騒ぎしたこともあるらしく、Bの話は「B先輩伝説」ということで、中学組はみんな知っている感じだった。
ただ、クラスメイトから聞いた話では
・Bの家系は呪われた一族
・この学校は受験勉強に疲れた人が集まっているから、それに惹かれて霊がハンパなく寄ってくる
まぁ、いわゆる「邪気眼」的な話のオンパレード。
クラスメイトの話ぶりも、「痛い先輩の話」というニュアンスだった。
私自身はBに会ったことはないし、Aにそのことを聞くのも気の毒だし、在学中は一切その話に触れなかった。
高校時代は仲良しだったAとも、大学進学を機に会うこともなくなった。
卒業時にメアド交換したけど、ソフバンがまだJ-Phoneで、ついでに地域ごとにドメインも違った時代だったからケータイを変更をしたあたりから電話帳からも削除していた。
再会したきっかけは某SNSで、出身校とプロフィールからAを見つけた次第。
意外と近くに住んでいることが分かり、「久々に会おう」ということで、都内で会って飲んだ。
Aは全く変わっていなかった。
最初は高校時代にハマっていたアニメとかの話をしたけど、酒の勢いもあったし、「今となっては厨二病」という感覚もあったので、「そういえばBさんって、どうしてるの?w」と聞いてみた。
すると、Bは亡くなっていた。
内心『マズっ』と思って話題を変えようかと思ったけど、Aが半ばヤケのように酒を飲み始めたのでそのまま話を続けることとなった。
実は、「見える」のはBじゃなくて私(A)なの。
といっても、年を取るにつれてあんまりみえなくなったけど・・・今じゃ、「違和感がする」「気持ち悪い」ってくらい。
それに、「見える」ことと「対処できる」ことは全く違うから、見えて得をすることなんかひとつもないよ。
Bの話も嘘。
だって、全然関係ないところに向かって「憑いて来ないで!」とか言って九字切ったりしてるんだもん。
実際、見えもしないのに「見える」と騒いでいるBにはムカついていたけど、それを証明するには自分も「見える」と言わなきゃいけないし、そんなことを言ったら私まで同じ扱いをされるから黙っていたの。
だから、中等部の頃は周りから色々言われて恥ずかしかったし、アンタは当時の話を知らない(実は聞いていたけど)から、当時は普通につきあってくれて嬉しかった。
でも、姉が変な方向に行っちゃったのは、多分私のせい。
自分が小さい頃に「見える」とか言って騒いだせいで、対抗意識を持ったんじゃないかと思ってる。
Bが中学の頃に「私も見える」とか言い出しちゃって・・・。
私の方は、小さい頃はお寺やら神社やら、色んなところに連れて行かれた記憶があるけど、生理が始まった頃からはあんまり見えなくなったしね。
とまぁ、Bの話は虚言だった。
それよりも、Aが「見える」という話の方がびっくりしたけど。
Bは私やAよりもはるかにいい大学へ進学し、実家を離れた。
Bはよほど大学生活が気に入ったのか、あれこれ理由をつけて全く帰省しなかったらしい。
Aも、Bの虚言につきあう必要がなくなったことと、自分自身も受験勉強で必死だったことで、姉のことは気にしなくなった。
私とAが友達になったのもこの頃。
その後、Aも大学進学で実家を離れた。
Aが社会人になって1年目。
祖母が他界したらしい。
おばあちゃんっ子だったAはすぐに帰省し、さすがにBも帰省したのだが・・・。
「ヤバかった。」
久々に会ったBは、成人して霊感の薄れたAにでも「見える」くらい、色々なモノをくっつけて帰ってきたらしい。
「分かりやすく言えば、全国の心霊スポットを歩き回ったのか!?ってくらい、ヤバかった。」
ひきつるAをよそに、Bは飄々としていた。
Aは直感的に、『Bはもう手遅れ』と感じたらしい。
と言っても、Aは「祓える」わけではないし、とにかく「一緒に居たくない」ということで、お葬式が済んだら逃げるように実家を離れた。
「一応、『お寺へ行った方がいいよ』とは言ったけど、私がそういう話をするのを嫌がっていたから、あんまり強く言えなかった」
「Bのことはそんなに好きじゃなかったし、それよりも背後のモノが怖すぎて・・・。」
Aの悪い予感は的中し、Bは半年後に急死した。
死因は急性心不全だった。
Bの死後、家族で部屋を引き払いに行ったAが見たものは、「呪い系」の本多数。
PCのお気に入りには心霊関係のHP。
おまけに、心霊スポットとおぼしき場所の写真・・・。
部屋に入ったときも「嫌な感じ」が終始止まなかったものの、ショックで放心状態の両親には何も言えず、遺品はAが全部処理したらしい。
Aの話はこれで終わり。
私も基本的には怖がりだから、それ以上つっこんだ話は聞けなかった。
まさか、再会記念飲み会が、こんな話になるとは思わなかったし。