「生贄」を一人選ぶ

カテゴリー「怨念・呪い」

一昨年亡くなった祖母から聞いた話。

祖母によると、祖母の父(曽祖父)はも地元の名家で、分家をいくつも持つ本家の筋だったらしい。

その家では一族で信仰してる宗教があり、10年に一度、本家分家すべてを集めて神事を行う。
これは本家から、少し離れた山にある社まで、山菜の摘めた箱を運び奉公するというもので、その土地の神様に一族の繁栄を祈願するための祭りらしい。

これとは別に60年に一度行う、裏の祭りがあった。

正式な名称はよく分からないので、ここでは裏祭と呼ばせてもらうが、これは本家、分家から10歳未満の子供を集める。
集められた子供は夜になると山の中に設けられた広場で、禊を受け一人づつ順番に明かりも持たされずに山から下ろすというものだ。
こうして無事に帰ってきた子供は神様に認められて祝福を受けた子供であり、血筋を絶やすことなく今後のより一層の繁栄を約束された子供になる、という意味で行われた。

しかし、これがそもそも建前に過ぎず、本来の目的は別にある。

この裏祭は本家の人間のみが取り仕切るのだが、祭りを行う前に分家の筋から「生贄」を一人選ぶ。
裏祭当日、神事を進行する人間とは別に、本家から男が何名か隠れ、生贄に指定された子供を頃合を見計らって攫う。
そして攫われた子供は本家の人間しかしらない特別な祠に連れていかれ、閉じ込められ2度と出てくることはない。

神に子供を捧げることでその庇護を願うのが裏祭の本当の目的だったそうだが、当然分家だけに絞るとなると反発もあるし、また選ばれた子の親は当然庇いたてする。
そのため尤もらしい言い訳をつけて、子供を山の中に一人にすることで攫いやすく、また戻ってこない子供に関しては山の中で遭難したということで、行方不明扱いにし、事を必要以上に荒立てないようにしたそうだ。

曽祖父はこのときに攫う役を担わされたそうで、祖母にこの話をするときにはいつも辛そうな顔をしたそうだ。

曽祖父は戦争を期に、終戦後本家から縁を切った(というか名目上は失踪)ので、戦後その家がどうなったのかは分からない。

とはいえこのご時世にそんなことを出来るはずもないので、ひっそりと取りやめになったのではないかと祖母は言っていた。

大雑把な上にさして怖い話ではないかもしれないけど、そんな話がありました。

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