墓を堀始めた

カテゴリー「都市伝説」

九州のある高校生の体験です。

歴史クラブの仲間4人が、夏休みを利用して山奥の小さな村に出掛けました。
目的は、その村のお寺や神社の歴史を調べるためでした。

3日間かけた調査も終了したその日、4人は、今日で最後だから記念に百物語をやろうと話し合いました。
場所は、調査のとき見つけた村はずれの、人の住んでいないお寺に。

計画を立てたのは昼間だったので、そのときはみんな「やろうぜおもしろそうだ」などと元気よくいっていましたが、いざ、夜になって荒れ寺にきてみると、薄気味悪くて内心ビクビクしていました。

4人とも後悔しましたが、でも、臆病者と思われたくないので、じっと痩せ我慢をして、誰ひとり、やめようなどとは口にしません。
もちろん、荒れ寺に電灯はなく、その上闇夜で辺りは真っ暗です。

4人は百本のローソクに火を灯すと、それぞれが座敷のすみに座りました。
怪談をひとつ語るごとに、ローソクの火をひとつずつ消していくのです。

初めのうちは、たくさんの炎がゆれて、座敷の中も明るかったのですが、1本消え、2本消していくうちに、だんだん暗くなり、夜もふけていきました。

とうとう最後の1本になりました。
座敷の真ん中で、小さな火がちらちらゆれているだけで、4隅にいる4人の顔はお互いにまったく見えません。
百番目の話をすると、なにか怪奇な現象が起きるという言い伝えがあるため、誰も話したがりません。

「おいA君が話せよ」

「俺は全部はなしたよ。C君話してよ」

等と言い合っているうちに、やっと一人が話し始めました。
その話はこんな話です。

20年前、ある学校の寮で起きた事件。
二人の男子学生が同じ4号室で生活をしていました。
仮に、T男とE男としておきましょう。

ある夏の夜更け、ふと目を覚ましたT男は、となりのふとんにE男がいないのに気づきました。
便所にでもいったのだろう、と思っていましたが、なかなかもどってこないので、そのうち寝てしまいました。

朝、目覚めると、E男はいつものようにふとんの中で寝ていましたところが、そのことがあってから、寝ているE男がいつのまにかいなくなり明けがたに帰って来ることがあるようになりました。

不審に思ったT男は、ある晩、寝たふりをしてじっとE男の様子を見張っていました。
すると、みんなが寝静まったころ、すうっと布団から抜け出たE男は、辺りを見まわすと、寝巻きをきたまま静かに部屋を出たのです。
T男は、気付かれぬようにそっとあとをつけていきました。

E男は、足音をたてないように物置にいくと、クワと、真新しいカマをとりだし、早足で裏山のほうにはいっていきました。

T男は、身を潜めながらあとを追いました。

細い道をどんどん奥に入っていったところの墓場で、E男は足を止め、そして、じろっと周りをねまわしたあと、クワをふりあげて墓を堀始めたのです。
それは、つい最近交通事故で死んだ若者の墓・・・。

T男は、木の後ろから息をころして見ていました・・・。

30分程ほったところで、新しい棺桶がでて来ました。
E男は棺桶の中から死んだ若者の腕を持ち上げると、グサリと、カマで切り取り、突然、むしゃぶりつきました!

地獄のような光景に、T男は思わず、「ハッ」と、小さな息をもらしたのです。
血に染まったE男の、真っ赤な顔が、バッと振り返り「見ィたァなー」とうめきました。

T男は、後ろに跳び跳ねると、さっききた道をがむしゃらに走る。

E男:「まてェーだれだ!」

後ろからE男がわめきながら、カマをふりかざして追ってきます。

T男は、死に物狂いで走って寮につくと、そのまま自分の部屋(四号室)にとびこみ、頭から布団をかぶりました。

心臓は波のように高鳴っています。
まもなく寮にかけ戻ってきたE男は、凄まじい顔つきで、1号室に入りました。
そして、寝ている学生の布団の中に右手を差し入れ、その手を胸にあてました。
左手には、血の滴るカマを、今にも打ちおろさんばかりに振りあげています。
胸に手をおいたE男は、心臓の動きが静かなのを確かめると、「おまえじゃなァーい」と呟いて、次に、隣で寝ている学生の胸に手をあてました。

「おまえでもなァーい」とうなずきます。

こうして、1号室、2号室、3号室と入って、とうとう4号室に向かってきました。

T男は、目をとじて寝た降りをしていましたが、夜道を走ったのと、恐怖で心臓ははげしくたかなっています。
すーっと戸を開けてはいってきたE男は、そっとT男にちかづくと、カマを振りかざしたまま、ふとんの脇から手を差し込み、その手をT男の胸にのせました。

E男:「おまえだ!」

これで百番目の話はおしまいです。
最後のローソクの火を消すと、暗闇のなかで4人はなにかがおきるのを、震えながらまちました。

でも、5分たっても、10分たってもかわったことはありません。

そのうちA君が、「それにしても、最後のB君の話は怖かったぜ」と、ため息まじりにいいました。

「冗談いうなよ。僕じゃないよ。今の話はC君だろ」

「僕は、黙ってきいてただけだよ。D君の声だと思ったけど」

「違うよ。俺はてっきりA君だとばかり思ってきいていたぜ」

「・・・・・・・・・」

4人は、ぞーっと震えあがりました。

一体誰が百番目の怪談を語ったのか?

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