ある女性が深夜、仕事からの帰り道、黒い服を着た男が走っていく姿を目撃する。
その翌日、女性がテレビ番組を見ていると、自宅の近くで殺人事件があったことを知る。
同じ日、制服の警察官がやって来て「この近所で殺人事件があったのをご存知だと思うのですが、その件に関して何か心当たりはございませんでしょうか。」と、聞いてくる。
女性がドア越しに「何も知らないです。」と返答すると、警官は、「事件のせいでこの周辺の警備が強化されておりまして、私はパトロールでこの付近を巡回しています。また後日同じ時間にお尋ねしますのでその時に、もし何か思い出した事がございましたらどんなささいな事でも構いませんので教えてください」という旨の言葉を残して去っていく。
翌日も、翌々日も、その翌日も、決まった時間に警官は来る。
女性は仕事熱心で立派な警察官だなと思いつつ、やはりドア越しに「知らない。」と答え続けていた。
そんなある日、いつもの様に警官が帰った後、女性は事件当日に黒い服の不審な男を見た事を思い出す。
明日警官が来たら、その事を話そうと女性は思う。
次の日の朝、女性がテレビ番組を見ていると、例の事件の犯人が捕まったとのニュースが流れる。
だが、女性は犯人の写真を見て驚愕する。
捕まった男は、自分の家に聞き込みに来ていた警察官その人だった。
あるいは彼が警察官に扮装し、女性が事件に関係する事を思い出さないか監視し、もし思い出せば口封じに殺害してしまおうと狙っていた犯人だったのだ。