「イラン人の歯科医が、追跡機能を備えたマイクロチップを妻の歯に埋め込んでいる。チップの大きさは小麦の粒くらいで幅はベルミチェッリ(素麺のように細いパスタ)程度だろう」
国際テロ組織アルカイダのリーダーで、米同時多発テロで3千人の命を奪った、オサマ・ビンラディン容疑者が潜伏中、仲間に宛てた手紙の一部だ。
米政府の発表によると、2011年5月2日未明(現地時間)、パキスタンの隠れ家に妻や息子らと住んでいたビンラディン容疑者を、米軍の特殊部隊が急襲、殺害した。
米政府は、隠れ家から押収した数千点もの資料を昨年から少しずつ公開。
長い潜伏生活のなかでしたためた本人の遺書やアルカイダメンバーに宛てた手紙、過激派の文書など中身は多岐にわたる。
用心深い彼は、インターネットを使わず、手紙に頼った。
ビンラディン容疑者の震える文字からは、米軍の追跡に怯え、周りの人間に猜疑心を抱く、神経質なテロリストの姿が浮かび上がった。
軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は言う。
「穏やかな性格で人望はあったが、弁が立つわけでも、戦闘能力に長けたわけでもなく、テロ組織のリーダーとしては珍しいタイプ。しかし、豊富な資金力を背景に、アルカイダ組織を各地に構築していったのです」
都市伝説のように、いまもビンラディンの生存説が絶えない。
米国家安全保障局(NSA)が国民の情報を収集していたと内部告発した元CIA職員のスノーデン氏が、「ビンラディンはCIAの監視下、妻や子供たちとバハマで優雅に生活している」とロシアメディアに暴露。
昨年5月には、イラク戦争の内幕報道などのスクープで知られる、ジャーナリストのセイモア・ハーシュ氏が英国の雑誌で、殺害作戦で銃撃戦は起きなかったと主張した。
もっとも、黒井氏はこう否定する。
「いまも米議会でビンラディンをめぐる様々な議論は絶えませんが、生存説は100%ありません」
ビンラディンの遺言には、「スーダンにある2900万ドル(約32億円)の資産はジハード(聖戦)に使うことを望む」と記されていた。
遺産の行方はどうなっているのか。