男は山道を走っていた。
山の頂に住むという仙人に会うためである。
彼は近々結婚を控えていたのだが、村に謎の伝染病が流行ってしまい、それどころではなくなってしまった。
婚約者も彼の家族も皆病床に伏せってしまい、居ても立ってもいられなくなった男は、何でも知っているという仙人に、知恵を借りに行ったのだ。
そして、ようやく仙人に会う事の出来た彼は尋ねる。
彼:「村のみんなが変な病で苦しんでいる。どうしたら助けられる?」
仙人は悲しそうな顔で答えます。
仙人:「わしの力じゃあどうしようもない。悪魔の力でも借りん事には無理じゃろて」
男はなおも食い下がる。
彼:「ならその悪魔の居場所を教えてくれ。私はどうしてもみんなを助けたい」
仙人はしばし悩んだ後、答えました。
仙人:「うーむ・・・まあいいじゃろう。悪魔の住む村を教えよう。じゃが、おそらくどうにかできるのは、白い尻尾の優しい悪魔達だけじゃ・・・黒い尻尾の意地悪な悪魔達には無理じゃろう。それを忘れるな」
男は悪魔の住む村の場所を教えてもらうと、すぐにその場所へと走りました。
そして白い尻尾の悪魔を見つけると、頭を下げて頼みました。
彼:「私の村で妙な病気が流行り、皆苦しんでいる。どうか助けてほしい」
悪魔はにこやかにほほ笑むと、「ええ、良いですとも」と一言言い、呪文を唱えました。
悪魔:「もうこれで大丈夫。さぁ早くお帰りなさい。」
そして男は悪魔に涙ながらにお礼を言うと、一目散に村へと帰って行きました。
彼:「これでみんな助かったんだ・・・」
男の足取りは、来た時以上に軽やかでした。
そんな男が帰るのを見届けると、白い尻尾の悪魔に黒い尻尾の悪魔が近づきこう言いました。
悪魔に黒い尻尾:「俺にはお前みたいな酷い事は出来ないよ」
白い尻尾の悪魔はニコニコしながら答えます。
白い尻尾の悪魔:「あなたは私なんかと違って優しい方ですからね、仕方ありません」