猫の怨念だった?

かなり、以前の話になる。

私が某キャラクターグッズ製造・販売会社でアルバイトをしていたときのこと。
私の仕事は、各店舗や、映画館などからの注文書にあわせて、倉庫の中から商品を取り出し梱包、発送するものだった。
倉庫は、体育館ほどの大きさがあり、内部は2層の造りになっていた。

毎日大量の商品が搬出搬入しており、中での商品の整理は皆無に等しく、目当ての商品を探し出すのは、いつも一苦労であった。

その日、数日ぶりにアルバイトに行くと、ベテランの友人O君は休んでいた。
なんでも、崩れてきた缶ペンケースの下敷きになり怪我をしたとのことだった。(缶ペンケースでも1箱あれば相当の重さになり、場合によっては死ぬこともある)
彼のいないその日の仕事は、大変忙しいものとなった。

私:「あれっ?Mさん、こんな商品ってありました?」

私の取ったその発注書には『お出かけボックス50個』と書いてあった。
しかし、私の記憶ではその商品名に心当たりはまったくない。

Mさん:「あぁ、そう言えばO君が、おとといくらいに入荷チェックしていたなー。どっかにあるんじゃない?ついでに探しといてよ」

チーフのMさんは、こう無責任に言った。

しかし商品を見た者は、O君以外にはいない。
発注書を見ると、それは大手映画会社の系列店舗だった。
どうやら『お出かけボックス』とは、映画に関連するグッズであろう。
こうして私の『お出かけボックス』捜索が始まった。

昼食を終えた後から捜索を開始したはずであったが、気が付くと倉庫の外では太陽が沈んでいる時間だった・・・。

しかし、懸命の捜索にも関わらず、1階と2階の主だった場所には、それらしい商品はまったく見あたらなかった。
これだけ入念に探してもまったく見つからないとなると、残るは2階の暗礁地域だけだった。

暗礁地域・・・。
そこは倉庫2階の一番奥に位置し、商品の箱々の間を延々と越えていかなければ到達できない場所にあった。
売れずにうち捨てられた商品や、激しい商品開発の末、ついに日の目を見ることなく、お蔵入りとなったの商品たちの墓場であり、また販売促進イベントで使われ、忘れられた着ぐるみ達が、恨みの形相で、商品の影から我々の様子をうかがっている・・・。

・・・・・・・・・そんな場所だった。

しかし暗礁地域と言われる最大の由縁は、その一帯の室内灯が、壊滅的に破壊されており、加えて内外の光も届ぬ場所にあるため、懐中電灯なしでは昼間でも立ち入る事が出来ない点であった。

私:「痛たたたた~っ!何だよ!この足場はっ!」

結局、私はたった独りで暗礁地域での捜索を行っていた。
途中、何度も崩れてくる廃ポスターの山に押しつぶされそうになりながらも、次第に捜査の手を奥へと進めていった。

懐中電灯は電池が少なくなってきているのか、次第にその明るさを保てなくなってきていた。

私:「時間がない」

私のあせりは次第に強くなってきていた・・・。
と、突然ここには似つかわしくない目新しい段ボールの一団が目の前にそびえていた。
足下を見ると、ここだけ埃がはいたように無い!

私:「これは?」

この倉庫では見たこともない、大きな段ボールであった。
大型冷蔵庫が入っているのでは?と思われるそれには、ピンクの丸文字で何かが書いてある。
私は慌てて段ボールに駆け寄ると、その文字を確かめた。

『お出かけボックス×1G』

そこにはそう書いてあった。

「やっと見つかった!」

安堵の瞬間だった。

しかし、のんびりしている場合ではない。
早くそれを暗礁地域から出して、梱包せねばならない!

私は、その大きな段ボールを運び出そうと、力一杯持ち上げた。
が、それは見かけにそぐわず軽かった!
勢い余った私は段ボールを、放り出しかけた。

その瞬間!!

にゃぁぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~ん

猫の鳴き声が辺り一帯響いた!
それは、1匹、2匹の猫ではなく、50匹、100匹猫の声だった!

眠りを覚まされた猫たち。
それが、自分の抱えている段ボールの中で不気味に鳴いている。

私:「う、うぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

暗礁地域での予期せぬ恐怖に私は、我を忘れて逃げ出した。
逃げる途中振り返ると、暗い闇の中では数え切れない程の猫たちが何かを訴えているかのように鳴いていた・・・。

その後が大変だった。

動揺しまくった私の話を聞いたチーフ率いるアルバイト軍団は、各々に網や捕獲のための道具を持って『暗礁地域・猫大捕獲作戦』に乗り出したのだった。
そして、暗闇で鳴き続ける問題の段ボールをアルバイトが押さえつけ、中を確かめるべく、チーフがゆっくりとガムテープをはがしていった。

・・・・・・中にはぎっしりと・・・・・・・・・・・・お出かけボックスが詰まっていた・・・・・・。

『チャトラン・お出かけボックス』

私が探していた物は、映画『子猫物語』の劇場販売グッズであった。

それは、紙で出来たバスケットケースであり、表面には子猫『チャトラン』が愛くるしい表情で描かれていた。
そして、子供が持って歩くなど振動を与えると、中からかわいらしい猫の鳴き声がするように仕掛けされているものだった。

かわいらしい鳴き声?

それは1匹や2匹でのことである。
段ボールに書いてあったのは『1G』。
つまり1グロス。

1ダース(12匹)×12セット=144匹。

私:「猫144匹!?」

これではどう聞いても『恐怖の大王の唸り声』にしか聞こえなかった。

数日後、怪我も治り顔を出したO君に非難は集中した。

私:「おいO君、何で『お出かけボックス』をあんな所にしまったんだ!」
O君:「え?あそこは売れ残りとか、古い物をしまっておく場所でしょ?」

私:「そうだよ!わかってるんじゃないか。じゃあ、なぜ公開前の『子猫物語』グッズを、あそこにおいたんだ?」
O君:「公開前?いやだなぁ!ぼく、けっこう前に観ましたよ。タロウとジロウは・・・」

私:「・・・・・・・・・それは、『南極物語』」

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