小さい頃住んでいたのは九州の山の中。
近所に外国人などひとりも住んでいなかったのに、今思い返すと毎日白人の少女達と森の中で遊んでいた。
今は亡き祖母がどうみても日本の森ではないフランス人画家の書いた絵を指して「あなたはこんな景色の中で生まれたんだよ」と言った。
中学校に上がった時、英語の授業を受けるようになって、私のスペルの読み方がフランス流である事を知った。
習ってもいないフランス語が読める。
両親は普通の日本人だ。
18歳で初めてフランスの地を踏んだ。
シャルル・ドゴールを遠く離れその風と森の匂いに、私は確かにそこが自分の故郷であると感じた。
今私は大人になった。
長い手足、大きなお尻、柔らかい巻き毛、ピンク色の肌。
両親とは似ても似つかない白人の女性が鏡の中にいる。
私は一体何者だろう。