ある老人の日課

ヨーロッパのある国の警察に地元の老紳士から電話があった。

「妻が半年前に死にました。」

始め警官はイタズラだと思い、相手にしなかった。
しかし次の日も電話があった。

「妻と別れる決心をしました。」

さすがに警官も怒って注意した。
しかし老人は住所を告げて切ってしまった。
不審に思いながらも警官はその住所に行ってみることにした。
数分後、到着すると住所の場所には小さな一軒家が建っていた。

警官が窓から中を覗くと老夫婦が仲良く寄り添いながらテレビを見ている後ろ姿が見えた。

「やはりイタズラか・・・」と帰りかけたが、イタズラがあったと言うことを知らせなければならない。
呼び鈴を鳴らすと老人の男性が出てきた。

警官が事情を説明しようとすると老人は微笑んで言った。

「お待ちして居りました。妻は居間に居ります。」

あっけらかんとする警官をよそに、どうぞどうぞと家に招き入れた。

居間に入ると婦人が一人でテレビを見ている後ろ姿が目に入った。
警官は尋ねた。

「奥さん。どうかされましたか?」

しかしいくら待っても返事がない。

「妻は半年前に絶命しております。」

お茶を入れて戻って来た老紳士が言った。
警官はまさかと思った。

急いで回り込んで見るとなんと婦人は白骨化した死体だった。

経緯はこうだ。
半年前のある日、老紳士が帰宅すると婦人が居間でテレビを見ながら絶命していたらしい。
だが、五十年連れ添った妻の死をその老紳士は受け入れられなかった。

それから半年。
毎日妻のために食事を作り、掃除や着替えや洗濯をし、居間で婦人とテレビを見ることを日課にしていたそうだ。

しかし昨日、婦人が夢に現れて「ありがとう。」と一言だけ言って消えた。
そして老紳士は妻の死を受け入れる決心をしたという。

老紳士は妻を埋葬した後、一度逮捕されたが、新聞に美談として取り上げられ、罪には問われなかった。

いまではあの小さな一軒家で婦人の写真を磨く事が日課となっているそうだ。

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