彼が幽霊だと気づかない人の方が多い

カテゴリー「都市伝説」

昆虫採集をする際に昆虫が豊富に採れる山梨周辺のスポットがある。
そこは自然が色濃く残っていて、様々な野生動物が多く生息している。
その昆虫採取スポットにまつわる怖い話。

大学生の昆虫マニアが一人でそのスポットに赴いた時のことである。
夢中で昆虫採集に興じ、気付いた頃には日が傾き始めていた。
鬱蒼と茂る森の中、辺りに霧も立ち込めて来て、いよいよ気味が悪い。
収獲もそこそこあったので、東京へと帰ることにした。

国道の脇に車を止めておいたのでそこまで歩いていたときのことである、後ろからふいに声を掛けられた。

「どっちに行けば街に出られますか?」

振り向くと登山者風のひげの生えた男だった。

「街は○○町側の方が近いから、この道を進んで国道に出たら左に行くと街に出られますよ。」

道を教えてあげた。
道を教えたは良いが、街まで出るには結構な距離がある。
歩いて行くつもりなのだろうか?
親切心から登山者風の男に「車に乗って行きませんか?」と声を掛けたのだが男は無視してどんどん歩いて行く。

そしてあっという間に姿が見えなくなってしまった。
この登山者風の男は、昆虫マニアの間で有名な幽霊で、何をする訳でもないがいつも道を聞いてくるという。
その振る舞いがあまりに生きた人間のようなので、彼が幽霊だと気づかない人の方が多い。

しかし、何回かその採集スポットに通うと登山者風の男に度々出会うことになるので、彼が幽霊だと気づくのだ。
そしていつも決まって「どっちに行けば街に出られますか?」と声を掛けられる。

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