2度と使いたくないトイレ

カテゴリー「都市伝説」

小さな峠を通過中、強烈な便意が来た友人は小さなドライブインに入った。
といっても地方の小さなドライブインであり無人。

簡単な見晴台と古びた自販機が数台、小さな公衆便所が一つのみ。
汲み取りじゃなきゃいいなと思い男子トイレに入る。

陽が落ちた後なのでトイレはぼんやりとした明かりが灯っていた。

小便器数台と大便用の個室が一つ。
幸いにも水洗式でホッとした。(地方の寂れた公衆便所だといまだに汲み取り式があり、それに入るのが死ぬほど嫌だとか)

和式の便器に跨って便意を開放、安堵の溜息を漏らす。

紙でほとんど拭き終わった頃、ズル、ズルと何かが引きずられるような音が聞こえてきた。

気味悪いなぁ、と思い拭くスピードをあげていると、その音はトイレの中に入ってくる。

音は個室の前で止まり、ガンガンと強い感じのノックが響いた。
もう少しで終わるというのにと苛立ちを込めてノックを返す。

ゴン、ゴンッ、ガン、ガン!!

まるで殴りつけるようなノックが入る。
それも明らかにこぶしではなく、たとえば頭突きでもしているような大きさで。

うー、うー、と言う気味の悪い唸り声が響いた後、「ガン、がんがんがんがんがんがんがんがん!!!!」と、蝶番が外れかねないと思うぐらいにノックが連打された。

ピタ、ピタ、と音が響き下を見ると薄汚いタイルの上に赤黒い血が滴り落ちていた。

ドアの下の隙間から見える影も大きく、明らかに普通じゃない異常な雰囲気だったという。

だが、友人はおびえる所か激怒していた。

少し待てば良いのに相手はまるで此方に押し入らんばかりの態度。
カッとなった友人は思い切りドアを殴りつけて叫んだ。

「っせぇ!! 大してるんだから外で待ってろダボが!!!!」

あれ程続いたノックか頭突きがぴたりと止む。

その中で吹き終わった友人は立ち上がり水を流すと、ずりずりずりと引きずるような足跡が遠ざかるのを聞いた。

深呼吸した後、一気にドアを開けて友人は個室を飛び出した。

テンパッて叫んだものの、人心地ついた後で相手の異様さに気づいたらしい。
さすがに怖くなったのでダッシュでトイレから飛び出したのだ。

トイレから飛び出して駐車場を横断している時背後から「ズズズズズズズ、ガタン、ゴトン!!」と激しい音が聞こえた。どうやら『外で待っていた相手』がトイレに飛び込んだらしい。

友人は振り返る事もなく自分の車に乗り込むと、わき目も振らずドライブインから走り去ったそうな。

もちろん、その後彼がこの付近を通ってもそのドライブインのトイレを使うことは二度となかったという。

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