「運動会で弁当を盗まれる事件が相次いでいるらしい」。
こんな情報が9~10月にかけて、鹿児島市の小、中学校の保護者に駆け巡った。
一部の学校は、プリントや校内放送で盗難防止を呼び掛けた。
だが、真偽は不明。
市教委も県警も弁当泥棒の被害は把握しておらず「食欲の秋」「スポーツの秋」を揺るがす“『都市伝説』に関係者は首をひねっている。
出回った情報
「小学校の運動会で応援に夢中になっている間に盗まれたらしい」
「料理店を営む保護者が多い中学の弁当は豪勢で毎年被害に遭っている」など。
市教委は「弁当泥棒の話は昔、聞いた覚えはあるが、最近は聞いたことがない」と戸惑う。
「弁当泥棒がいるの?」
市中心部の小学校の保護者は運動会前、学校から配られたプリントを見て驚いた。
「他校で弁当や飲み物の盗難が発生したことがあります。盗難防止に心掛けてください」と書いてあった。
校長が十数年前に別の学校で弁当泥棒の被害に遭った経験をもとに「悲しむ子供たちの顔を二度と見たくない」との思いで書いたという。
でも最近の話ではない。
今月4日に運動会は無事終わったが、校長は「このプリントがうわさの元になったのでは」と気をもんでいる。
同小だけではない。
近くの中学校でも9月下旬の運動会当日、校内放送で「盗難にご注意ください」との呼び掛けがあった。
同日朝、生徒が財布を盗まれる事件が起きたのを受けた放送だが、昼食前だっただけに、保護者たちは「あの弁当泥棒の話だ」と話題になったという。
県警に確認すると、鹿児島西、中央両署管内の中学、高校で運動会当日、窃盗事件はあったが、被害は金銭などで弁当ではなかったという。
秋の深まりとともに謎は深まるばかり。
県警幹部は言った。
「弁当を盗まれても被害届は出さない人がいるかもしれない。弁当泥棒はいるとも、いないとも言い切れない」