俺も失神した

カテゴリー「心霊・幽霊」

後輩のS君が大学生時代に体験した話です。

当時S君はバレー部に所属していました。
そしてある大会での競技中にアキレス腱を断裂と言うアクシデントに見舞われたのです。
試合途中で退場し、控えの選手に担がれて病院へ連れて行かれました。
連れて行かれた先の病院はその界隈でも「出る」とうわさがある病院でして、でもその大会会場から一番近いのがその病院だったので、その時はとにかく慌てて連れて行かれたみたいです。
結局一週間その病院に入院することになりました。

6人くらいの相部屋でS君の向かいにベッドには気のいいヤクザ風のおじさんがいたそうです。
そのおじさんが早速教えてくれました。

「この病院、出るで・・・・・・」

詳しい話は聞かなくてもその日の夜から遭遇しました。

真夜中に誰かがワゴンを押して病室の前を行ったり来たりするのです。
ワゴンには手術器具が乗っているようで、カチャカチャという音とワゴンの車輪のキーキーという音が、最初小さく聞こえてだんだん大きくなり、病室を走り去るように通り過ぎて行き、そしてほどなく今度は逆の方からまた走って通り過ぎるのを確かにS君は聞きました。
なんでもそれは以前勤めていて事情で亡くなった女性看護士という話でした。

もちろん実際に姿を見た人も何人もいてそのヤクザ風おじさんも見たそうです。

元々そういう話に興味が無いS君は「ほんとかよw」と自分に言い聞かせながら、それでも夜中に病室の外へ絶対出ないようにしていました。
だって興味は無いないけど実際その不自然に行き来する音を一晩に何度も聞いてしまったのだから、敢えて出て行かない方が無難です。
でもそう気にしていると逆に出て行く用事は出来るもので最後の日の夜、消灯が過ぎて11時頃どうしてもトイレに行きたくなってしまいました。

S君は覚悟を決めてトイレに行きました。

トイレは病室からけっこうな距離がある。
病室を出て松葉杖をつきながら50mぐらい進んで、もうすぐつこうかというところで、トイレの方向から「カチャカチャ・・・・・・キーキー」と聞こえてくるではないですか・・・。

「これはまずい・・・・・・」

S君はトイレに行くのを諦めたが、自分の病室にもどるには距離がありすぎるから、一番近くの病室に避難。
それでも松葉杖のS君には結構な距離だ・・・。

S君は必死で進んだ、その間にも背後から「カチャカチャ・・・・・・キーィキーィ」と迫ってくる。

何とか辿り着き力いっぱいガラッと扉を開け病室に入った。
どんどん音が近づいてくる・・・。
とうとう音は真後ろにきた・・・。

だが意外にも何事も無く通り過ぎていきました。
そして前に聞いたときのようにまた戻って通り過ぎました。

でも何かおかしい・・・。
あれだけ大きな音を立てて扉を開けたのに誰も起きてこない・・・。

S君はもう来ないだろうから早く自分の病室に帰ろうと立ち上がった時、またワゴンの音がしたのです。

「いつもと違う・・・・・・」とS君は思いました。

ワゴンはまたを通り過ぎました。
そしてまた戻ってきました。
そして戻ってきた時、誰もいない病室の前で音はピタリと止まりました。

病室にいたS君もさすがにドキリとしたそうです。
でも病室の電気は点けてるし、実は見回りの看護婦かもしれない・・・・・・。

「カチャ、ギィィィィ」

扉が開いて誰かが入ってきました。

S君:「見回りの看護婦なら声をかけてくれるはず・・・・・・」

S君の心臓はバクバク、汗もかいてきました。

しかし・・・何も起こらない・・・・・・声もかけられない・・・・・・。

電気も点いてて室内は明るいままそれに背を向けたまましばらく硬直していたS君、恐る恐る後ろを振り返った時・・・看護帽をかぶった女性がワゴンに手をかけてS君を眺めていたそうです。
その女性の顔は真っ白で目はうつろなのにしっかりS君を見つめていました。

気がつくとS君は病室で倒れていて、病室の電気は点いたまま窓から薄明るい朝日が差していました。
フラフラと病室に帰ると時間は朝の5時過ぎ、S君の音に起きたおじさんはニヤりと笑って「あんた、見たんだね」と言いました。

S君が事情を話すとそのおじさんも「俺も失神した」と恥ずかしそうに教えてくれました。

・・・と、これがS君が話してくれた体験の全部です。
こんなドラマみたいな怖いこと、本当にあるんだなぁと思いました。

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