うちの塾の講師から聞いた話なんだが・・・。
既出中の既出で有名どころの話なんだよね。
でもそいつの脚色がなかなか面白かったので載せておきます。
とある雪国の話。
その日、3日に一度の列車が出ていた。
故郷に帰る者、都会に行く者、様々な人を乗せ列車は運行を続ける。
一面銀世界の雪の草原。
一線の線路が敷いてあり、そこを列車が轟音を鳴り響かせながら走っていく。
「キィィィー」
列車はまるで大猿の断末魔のような高い音をあげ止まった。
乗客ははてな?という顔をしながら外を見る。
そこには中年の車掌さんが何かを探しているのかのような素振りであたりをフラフラしていた。
なにかのトラブルであろうか?
まあその内走り出すであろう・・・。
乗客はひとまず自席につく。
それから三十分、小一時間・・・。
まだ列車は止まったまま動かない・・・。
流石に客を待たせている。
私は早く目的地に行かなければ。
俺は急いでいるのに、一部の客が立腹し不満を漏らしている。
客はまた窓を覗いてみた。
そこにはまだフラフラしてる車掌さんがいた。
何かを探しているのかな?
客は窓越しから車掌を呼んでみた。
車掌:「すいません、もう少し待ってください」
車掌は手を振りながら合図した。
客は不審に思い列車から外に出てみた。
客:「すいません、車掌さん一体どうしたのでしょう?できることがあれば手伝いましょうか?」
客は車掌の元へと寄った。
車掌:「お客さん、待たせてもうしわけない、実はですね、先ほど何かをはねてしまったみたいなんです」
車掌が困った顔でいうと客は驚いた顔をした。
客:「ほほぉ、それはなんですか?動物かなにかですか?」
車掌は少し間をためた。
車掌:「えぇ、そのようです。はねてしまったままでは申し訳ないので、せめて亡骸を見つけて葬ってやろうと思いまして」
客はあたりをチラチラ見渡す。
客:「そうなんですか、それでは私も一緒に探しますが、いいですね?」
車掌は足元をみて言った。
車掌:「えぇ、それがですね・・あなたの足元をみてください」
客は自分足元、つまり列車の下を見た。
客の顔は一気に青ざめた。
客:「こ、これは・・・動物なんですか?」
そこにあったのは血だった。
しかし量は半端が無く、犬や猫、兎や狐の類ではないであろう程の多量さ。
真っ赤ではなくドス黒く、まるでアメーバのようにドロッとしていた。
そしてそれの主である亡骸は付近には見受けられない。
一体どこに・・・。
客と車掌は残りの乗客に事情を話した。
客:「熊でもひいたのでは?」
この辺りには狐と兎しかいない。
客:「それではなにをひいたのですか?」
車掌:「もしかしたら、人間かもしれないんだ」
車掌の口からこの言葉が出た時点で客全員の顔は青ざめていた。
乗客と車掌は手分けして、そのはねた人間であろう亡骸を探し始めた。
客:「あ、あ、あったぞおおおお」
中年男性の悲鳴に近い声が鳴り響いた。
車掌及び乗客は囲むようにして集まった。
そこには人間の腰から下があった。
ジーパンを穿いていて大方男であろう。
車掌乗客はふるえながらも慌てながら上半身の捜索を続けた。
自責の念に押された車掌は少し奥の林の方へと進んでいったが、うしろからなにかの視線を感じた
うしろむくとそこには男性がいた。
しかしおかしい・・・。
その男性は子供の背丈よりも低い身の丈であった。
車掌はかたまっていた。
その男性には下半身がなかったのだ。
上半身だけ・・・。
腕で立つようにしていた。
「あの、いま列車とぶつかってしまったようなのです。それから痛みは感じないのですが、どうも調子がおかしい」
上半身だけの男性は普通に口を利いた。
車掌はかちこちの石のようだったが、とたんに狂った猿のようになった。
林の奥へ、奥へ、奥へ。
全速力で逃げた。
車掌が後ろ向くと「まってくださいよ~なんでぼくの下半身がないのですか?ねぇ?」と、上半身の男が腕だけで車掌の足に追いつく程の速さで駆けてきた。
車掌:「うわぁぁぁぁ」
車掌は走るのをやめすぐ近くの樹に登った。
するとその上半身も樹の枝をぐっとつかみながら登ってきた。
車掌:「うわぁぁぁぁ、うわぁぁぁぁ」
車掌はそのままショックで死んでしまった。
その男性も樹にぶら下がったまま出血多量で死んだ。
液体も瞬時に凍る氷点下の世界。
血が凍り、即死を免れたがそれが招いた悲しい事件であった。