私が一度受けた「お祓い」のことを書きます。
私自身オカルト嫌いではないのですが、職場が割と大きな病院ということもあって、むしろそっち方面にはできるだけ目を逸らすような日常でした。
それはBBQに招かれて上司のAさんの実家を訪れた去年の夏のこと。
Aさんの実家は古い大きな平屋の南西側に新築の二階建てをくっつけた奇妙な建築で、広めの庭の向こうに水田が広がっているなんとも長閑な家でした。
今月末はご祖父の三回忌とかで、私たちは着いて早々奥の仏間に通されてお線香をあげました。
そしてBBQの準備をしようと東側の玄関へ向かう長い廊下の途中で玄関が開き、青いTシャツ&迷彩柄のズボンを履いたAさんの甥っ子「N君」が入ってきました。
「ああN!そっち終わったらBBQ手伝って。お肉たんまり買ってきたから!」というAさんにN君は無言で頷き、長靴を脱いで家に上がりました。
真っ黒に日焼けしたN君は高学年ぐらいの男の子で、私が先頭のAさんの後ろで『おやイケメン君!ここはにこやかに挨拶しとこう!』と思った時でした。
N君が私に目を向けるなり、ガタ・・・ガタガタ・・・ガダガダガダガダパリン・・・ガダガダ・・・。
「な・・・なになに地震!?」
廊下の中ほどにあったガラス張り引戸が突然激しく揺れだして、全員がパニック状態となって
寄り添い合いましたが、パリンとガラスが割れる音がしたすぐ後に・・・ガタ・・・ガタガタガタ・・・ガダガダガダガダ・・・と、今度は縁側方面の障子やサッシが揺れ出して、みんな無言でしゃがみこんでその場の恐怖をしのぎました。
揺れはすぐに止みましたが、揺れ出してから止むまでおそらく10~15秒程度。
「・・・すごい地震だったねぇ~」という、Aさんの同僚のBさん。
「あー・・・この辺りって地盤が柔らかいみたいでね、ちょっとの地震でも激しく揺れる時があるのよ。・・・特にこの戸が揺れると・・・」と、引戸をガタガタと手で揺らしながらAさんは「結構怖いよねー!ハハハ!」と陽気に笑っていました。
私は揺れ出してすぐに照明の紐がそよりとも動いていないの見ていたので、これは地震じゃないのでは?と思っていましたが、ほっと胸を撫で下ろしているみんなには言わずにいました。
それから五日ほど経ち、AさんとBさんとの残業後に居酒屋へ誘われたとき、私はあの「地震」について思い切って尋ねてみました。
もちろんただ率直に、揺れたのは引戸と障子とサッシだけで他が揺れていないのを見ていたことと、調べても地震の記録がないこと、そしてもし地震なら非常に局地的な地震ではないか?と、淡々と話しました。
Bさんはずっと黙って枝豆を食べていましたが、Aさんは腕組みしながら「うーん」と二、三度頷いてから、少し愉快そうにBさんに向かって「・・・大丈夫かな?」と。
Bさんは小首を傾げ苦笑を浮かべて「うーん・・・」と考えてから、「・・・Cさん(私)ならいいんじゃない?・・・口固そうだし」と。
Aさん:「だよね。気が付いたぐらいだから、用心深いと思うしね」
私:「・・・・・・(何か大変なことを聞いてしまったのでは!?)」
そしてAさんは辺りを見回して、知り合いがいないことを確かめてから、あれはNの「お近づきのお祓い」であり、私たちの誰かに憑いていた悪い何かをぶっ飛ばしたこと。
そして『悪い何か』が出口を求めて右往左往した動きがあの戸の揺れである可能性が高いと。
Aさんの実家に招かれた客は例外なくN君に悪い憑き物を祓われてしまうことを、Bさんの時や過去の事例などを含めながら和やかに語ってくれました。
とにかくN君は、3歳ぐらいの時からすでにそういう悪い何かを許さない心を持つ、少し変わった男の子だという話でした。
そして、あの日の夜にAさんがN君に尋ねたところによると、「なんか、黒いキモイのがいたから出てけって思っただけ」らしく、それ以上聞くとN君は極端に機嫌を損ねて何日も口を聞いてくれなくなるので聞けなかったそうですが、とにかく家に嫌なものがいたから追い払っただけで、それが何であるかはわからない、とのことでした。
で、その「悪い何か」が憑いていたのがたぶん自分だと思うのは、15年以上も毎月私を苦しめていた重い生理痛が、その夏からピタリと止んだから・・・。
それから二度N君に会いましたが、未だに一度もちゃんと言葉を交わしていないw
長文すみませんでした。