叔母の話。
叔母は若くして結婚したんだけど、相手が借金こさえて女と逃げたため(今なら違法なんだが)配偶者ということで連帯保証人でもない叔母に借金取りがきたりした。
当時は借金取りが家まで押しかけてきてピンポンしまくったり扉をガンガン蹴飛ばしたりしてたから、以前の家に住んでいられなくなったので、うちに一時居候していた時期があった。
最終的に借金は父親が間に入って旦那と連絡をとりあって色々話しあいをして決着をつけたんだが、その間、叔母と当時小学生の俺達家族が一緒に暮らしていた。
ある日、叔母が突然「今日お客さんが来るからお茶菓子買いに行こうか」と言い出した。
誰か来るんだな、程度に思っていて買い物に一緒にいって家に帰ってきて母に「今日誰が来るの?」と聞いたら「え?誰も来ないよ?」と答えたので、叔母の勘違いか?と思っていたところ、突然電話が鳴り、親戚が「今、仕事で近所にきているんだが、時間があるのでちょっとお邪魔しても良いか?」と連絡があった。
もともとこちらに来る予定はあったが、時間が無いので連絡はしていなかったのだが、先方の都合で突然ぽっかり時間が空いたので事前の連絡は無しということだった。
その後もそういうことが何度かあった。
霊などは見えないし、未来を予知する能力があるわけでもなく、単純に突然来る来客をあてる能力だけがあるという、役に立つんだか立たないんだかよくわからない人だった。
その後、借金の件が片付き、正式に離婚もし、叔母は自分で部屋を借りて仕事をして再婚もして子供にも恵まれ、夫に先立たれ自分も病気になった。
入院していた病院が割と近所だったこともあり、時々見舞いにいっていたんだが、その日は珍しく化粧もしていて、どうしたのかと聞くと「今日お客さんが来るから」と言った。
「見舞い客?新しい彼氏でもくるの?」と冗談で言ったら「そういうのじゃなくて・・・」と言葉を濁した後「明日にはもう会えないと思うから」と俺に形見分けをしてくれた。
「まさか死神でも来るの?」とさらに冗談を言うと、「結構それに近いかもね」、と笑っていた。
その後俺は病院を出て自宅に帰った。
その数時間後、親父から「叔母が息を引き取った」、と連絡があった。
叔母には何が見えていたのか、もっとよく聞いておけばよかったとちょっと後悔してる。