A子が小学生の頃、中学生のA子の姉が毎月「花とゆめ」を買っていたそうです。
姉妹で読むということでA子の親から漫画代の半額を出して貰っていたそうで動物のお医者さんが流行っていたそうです。
発売日に買ってきた姉さんが読み終わるのをA子は毎月待ちかねていたそうです。
そんなある時、A子が同じクラスで仲良くしていたR子ちゃんが家に遊びに来たそうです。
A子がR子ちゃんに「これ面白いよー!」と「花とゆめ」を勧めたところ、R子ちゃんも連載の虜になったそうです。
それからは、A子の姉さん→A子→R子と毎月「花とゆめ」を回し読みするようになったそうです。
そんなある月、R子から電話がかかってきたのだそうです。
「月曜日まで待てないから、もしAちゃんが読み終わってたら貸して貰えないかなあ。明日取りに行ってもいい?」とあいにく日曜日は朝から家族で遠出する予定だったそうです。
でもA子もR子の早く読みたい気持ちが良くわかるので「うちの郵便受けに入れて置くから持って行っていいよ」と答えたそうです。
A子「何時に来る?うちの新聞を抜いた後でいい?」
R子「あの、もしもうAちゃん読み終わってたら・・・迷惑かも知れないけど今から取りに行っていい?」
A子「いいけど・・・。」
R子「こんな時間だから郵便受けに入れておいてくれる?チャイム鳴らしたら家の人に悪いし。本当にむり言ってごめんね。」
小学生が出歩くには遅い時間だったけど、R子の早く読みたい気持ちはわかるのでA子はすぐにそっと玄関を出て郵便受けに「花とゆめ」を入れておいたそうです。
5分もしないうちに自転車の音がして、A子が2階の窓から覗くとR子が片手で拝むような大人っぽい仕草をしたあと手を振って帰って行ったそうです。
翌月からは、A子が読み終わるとすぐ郵便受けに「花とゆめ」を入れておくようにしたそうです。
あまり遅い時間になりそうだとR子に電話をし「ごめんね。まだ読んでないから明日学校に持っていく」というとR子は「こっちこそごめんね。ゆっくり読んでね、いつもありがとう」という感じだったそうです。
でも、夜8時か9時に自転車で取りに来ることもあったそうです。
そして夏休みになり、A子はR子に「花とゆめ」どうする?取りに来るの?
と電話をしたそうですがR子の家は留守だったそうです。
一応郵便受けに入れておいたけど翌日になっても取りにこなかったそうです。
一週間近く経った晩、10時も過ぎた頃にR子から電話があり「今から取りに行くから郵便受けに入れておいてくれない。 遅くてごめんね」、
「旅行だったの?」と聞こうかと思ったそうですが小学生にとっては遅い時間だったから「いいよ。わかった」と電話を切りすぐに郵便受けに入れたそうです。
その後いつもより時間が経ってからA子は郵便受けの蓋がカチャって鳴ったようなので2階から覗いて見るとR子ちゃんとお母さんがいたそうです。
R子はいつものように2階を見ることはせずにお母さんと手をつないで帰っていったそうです。
A子は「今夜は遅いからお母さんと一緒なんだな。自転車じゃなく歩いて来たんだな」そう思っただけでした。
ところが・・・翌々日朝、連絡網が回ってきたのです。
R子が他県の母親の実家で母親が運転する車で海に転落して親子はふたりとも亡くなった。と・・・
この事故は、無理心中だったのでは?という噂があったそうです。
転落事故の時間はまさに前々日の夜10時過ぎだったそうです。