俺、中古車を扱う店で働いてるんだけどやっぱ、この業界って、いわくつきの車ってのがあるんだわ。
先日、買取依頼のあった車ってのが、練炭自殺で使われた車。
生々しい話になるが、しばらく発見されなかったらしく、死体は腐乱。
なもんで、死体から出てきた汁だかなんだかで、シートにはくっきりと人の跡。
シートを張りかえて、売りに出した。
うちの店長はあとあと、客ともめるのがいやなのでいわくのある車はちゃんと客に説明するんだ。
それでも、値段が安いせいか、購入者は出てくる。
で、その車も購入者が決まり、ほっと一息。
いつまでも、店にあるってのも、薄気味悪いからね。
で、ある晩、同僚と二人で店の戸じまりをした。
「あの車、買い手が決まったみたいだぞ。」
「へー、いつもながら、いわくつきの車とか買う人いるんですね。」
「そうだな、俺なら、絶対ごめんだけどな。」
「それもそうですね、でも、いつまでも売れ残るのも困りますけど。」
なんて、笑い話にしながら、店を閉めてると、急にバーンという大きな音。
急いで振り返ると、例の車の運転席と助手席の窓ガラスが粉々に割れていた。
何が怖いかって、割れたガラスの破片のほとんどが車の外に飛び散っていたことだ。
どう見ても、車内からの何らかの圧力で割れたとしか思えない状況。
何かが見えたってわけじゃないけど、久しぶりにいやな汗をかいた。