強制捜査が入る日

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

実はただ一度だけ、自衛隊に実戦投入の指令が出たことがある。
だがそれは敵国との戦闘ではなく、国内の過激派の鎮圧であった。

銃器、化学兵器、戦闘ヘリまで所持するオウム真理教に対してだ。
上九一色村に強制捜査が入る日。
教祖である麻原が逮捕されれば暴徒と化した信者たちが武器を手に取り、首都制圧を目論む麻原奪還計画を決行する可能性が高かったからだ。

実際、当時のオウムには東京を2~3日くらい制圧できるほどの武力があったという。

政府と当局は、最悪の事態に備えて自衛隊に待機、そして有事の際は彼らわ殲滅するよう要請し、自衛隊はサティアン周囲、そして拘置所への移送ルートに配備していたという。

さらに上九一色村で戦闘状態となり、サリンがばらまかれた場合は現場人員もまとめて焼き捨てるためナパーム弾の使用も許可していた。

これらの計画には、自衛隊内部からかなりの反発があったという。
だが「国全体のため、わずかな犠牲を払う」というのは軍隊の大原則。
自衛隊員は従うしかなかった。

「日本を、国民を守るために訓練を積んできたのに、同じ日本人に銃を向けなければならないのか」

初めての実戦が日本人同士の殺し合い。
多くの隊員は頭を抱え、涙を浮かべる者もいたという。

幸い、教団によるクーデターは起きなかったが、もし起こっていれば西南戦争以降初の内戦となっていた。
そして日本の未来も激変していただろう。

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