普通の女じゃなかった

カテゴリー「心霊・幽霊」

友達とコンビニに行ったときの話。

有名な走り屋の集まる峠の下のコンビニで、やんちゃな連中がたくさんいた。
その中で買い物をする為にレジに並んでいた。

結構人がいたので、面倒だなーなんて思っていた時に、山の方から猛スピードの車がくるのが見えた。
急ブレーキの音が店内まで聞こえて、皆が何事かとそっちを注目した。

停まった車はDQN車。
そこから慌てるように二人の男が飛び出してきた。
自動ドアが開いて、その男二人は口々になんか喚いていた。

「女が!」
「幽霊だった!」

そんな事を言っていたと思う。
はっきり言って動揺しすぎていて、噛み噛みだしわからん。
でも顔は真っ青・・・。

幽霊が出ると有名な峠だし、そんなに気にしてなかったんだけど、そのうちレジで並んでた一人が「わっ!?」と声を上げた。
そのうちに店内がぎゃぎゃーと騒がしくなって、店の中の客は窓際じゃなくて奥の方へと逃げ出してた。

なんだろうと思った時に、友人に教えられてようやくわかった。
DQN車の中を覗き込んでいる女がいた。

どう考えても普通の女じゃなかった。
動きが何か変。
そのうちこちらに気づいて全力で走ってきた。

長い髪がぐっしょり濡れているみたいだし、服もなんだか汚い。
しかも裸足。
なんだか向こうが透けて見える。
もう店内大パニック。

バンっ!て音がして、女は自動ドアにぶつかってそのままその場にしゃがみ込んだ。
何が起こったのか一瞬わからなかったが、悲鳴は大爆笑に変わった。
自動ドアが開かなかったから、全力でぶつかったのだから相当痛そう・・・。

笑ってから、落ち着いてもう一回見たときには女はいなかった。
ドアの前にも駐車場にも・・・。

女が『人間じゃない』事に気づいて笑いもしぼんでいった。
姿が見えないだけで、まだいるかもしれない。
笑った自分達を恨むかもしれないと、誰ともなく思ったんだと思う。

とりあえず会計を終えても誰も出て行かない。
出入り口に近づくのも誰もしない。
十分くらい経ってから、奥から店長らしき人が出てきて自動ドアの前に向かった。

「大丈夫ですよ」って言いながら、泣いていたDQN二人に塩をばらばらと投げつける。

「怖い人は言ってください、塩サービスしてます」

笑いながら言ってる店長のお言葉に甘えて、塩を撒いてもらってみんな外に出ることにした。

やっぱり女の姿はなかったけど。

「これで三回目です」とこっそり教えてくれた店長。
どうやら、峠を攻めるDQN車に憑いてくるんじゃないかということだった。

実は私、この女を見たのはこれで二回目。

一回目は生きている人間じゃないかと本気で思ったくらいだ。
一回目の時は、車の屋根にしがみついてそのまま女は行ってしまったので、正直、ドッキリ系の撮影かと思っていたんだけど。
違ったらしい。

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