私が小学生の時です。
その頃、ちょうど学校の怪談というものがブームで、口裂け女やトイレの花子さんといったものに、本気でビビってました。
ご存知の方も多いと思いますが、怪談の一つに「合わせ鏡」というものがありました。
これは、午前0時に鏡を向かい合わせると、悪魔が出るだとか未来の自分が見えるだとかいう話です。
口裂け女にマジでビビる私が、そんな行為をするわけもないのですが、私の姉が、やってみようと言い出したのです。
ちょうど祖母の家に手頃な姿見鏡があるのを知ってた姉は、泊まりにいくという口実で、祖母の家でそれを実行することにしました。
祖母の家は無駄に広く、それでいて0時なんて普段起きていない時間に、暗い部屋で待機しているのがひどく恐ろしく、私は姉に「ねぇやめようよ」、と何度も言いましたが、姉は全く諦める様子がありませんでした。
0時5分前ぐらいになってから、鏡を合わせ、スタンバイしていました。
そして0時ちょうどになったら、姉と一緒に鏡の中を恐る恐る覗き見ました。
なんの変哲もない、恐々と鏡を覗く私と姉が、何重にもなっているだけでした。
ほっ、と、安心しました。
何も起こらないね。そういって隣の姉を見やると、何やら姉が私の顔を不機嫌そうに睨んでいました。
なに?私がいうと、
あんたいつまで笑ってんの?姉がいいました。
笑ってないよ。こんな不気味な行為をしている中、笑う理由がありません。
笑うなっていってるでしょ!持ち悪い!
そういって、姉は私のほっぺたをつねり上げました。
その後喧嘩になり、姉は片付けもせずに布団に潜り込みました。
私は鏡を片付ける前に、もう一度見ましたが、そこには半べその私が何重にもうつっているだけでした。
もしかしたら、ほっとした時に気持ちが緩んで、思わず笑っていたのかもしれない。
そう思って、翌朝姉に謝りました。
すると姉はこういいました。
あんたは鏡を覗く前からずっと笑っていた。と。