小学3年生の時のダチの家からの帰り道。
その道は、周りをたんぼや畑に囲まれた、長い一本道だった。
周りは誰もいない。
俺はその道を、自転車を押して歩いていた。
道の内側に自転車。
俺は思い切り端を歩いていたんだが、道の真ん中ら辺で、不意に左足を滑らせて自転車諸とも畑にダイブした。
畑と自転車に挟まれた挙げ句、左足を捻ったのか痛い。自転車を持ち上げることも出来ず、俺は不安から泣き出してしまった。
そしたら不意に、大丈夫?って声を掛けられた。
見上げたら、カップルが俺を見下ろしてる。
助けてって言ったら、男性が降りてきて自転車を退けてくれた。
俺を持ち上げて、道に上げてくれた。
女性は俺の顔や服についた土を、持っていた真っ白なハンカチで払ってくれた。
その間に男性は自転車も上げてくれた。
やっと落ち着いて、「ありがとう」って頭を下げた。
だが、顔を上げるとカップルがいない・・・。
見渡しても誰もいない・・・。
その時は『足の早いカップルだなあ・・・』なんて思ったんだが、よくよく思い出してもおかしいんだ・・・。
カップルは男女共に真っ白な格好をしていた。
男性はシャツにスラックス、革靴。
女性はつばの広い帽子にワンピース、ハイヒールを履いていた。
二人とも真っ白な格好だったんだが、顔だけが未だに思い出せない。
それから色々と見るようになったんだが、出来たらまたあのカップルに逢いたいと思ってる。
ちゃんと礼を言いたい。