朝方、男が山で草を刈っていると、目の前の斜面に、今にも巣穴に入ろうとして蠢いている蛇の尻尾が見えた。
いたずら心で尻尾をグイっとつかんで引っぱり出そうとしたが、蛇の力が思いのほか強いのか、力を込めて引いてもビクともしない。
だんだん疲れてきたので手を離すと、途端に尻尾は穴の中に入ってしまった。
何となく損をした気分を抱えたまま、作業を再開しようとした男が頭を巡らせると、いつの間にか日はとっぷりと暮れて、辺りの景色は闇に包まれようとしていた。
驚いて手荷物のところへ戻ってみると、持って来た弁当が空っぽになっていた。