同級生の話。
高校生の時、部活の合宿で山奥の寺に宿泊したのだという。
参加したのは七名で、皆一緒に大広間に寝泊まりしていた。
異変が起こったのは合宿最終日の夜だった。
夜半過ぎ、ふと目を覚ました彼は驚いた。
彼が寝ていたのは広間ではなく、庭に面した広縁だったのだ。
身体中が蚊に食われまくっていた。
痒さで目が覚めたらしい。
てっきり悪戯だと思い怒りながら広間に戻った彼は、再び驚くことになる。
そこで寝ていた筈の仲間が、一人残らず寝具ごと消えていた。
大慌てで深夜の寺院中を探し回ったという。
ほどなく皆、無事に見つかった。
一人一人てんでバラバラな場所に、布団を敷いて眠っていた。
目が覚めた仲間は何が起こったのかわからず、皆一様にあんぐり開けていた。
その後は夜が明けるまで、ろくに眠れなかったそうだ。
翌朝、起き出してきた寺の者に報告したところ、
「ああ、よくあることですよ。別に心配要りません」
そうさらっと流されたという。