友人の話。
里帰りした時のこと。
裏山を散策していた彼の行く手に、小さな子供の後ろ姿が現れた。
のろのろとゆっくり歩いている。
追い抜いた時、何気なく振り向いて見た。
目も鼻も口もない。
小さな模様が、ぎゅっと詰め込まれたような顔をしていた。
彼が硬直するや否や、子供の身体はグズッと崩れる。
耳障りな羽音を立てて飛散したのは、黒いトノサマバッタの大群だった。
彼の身体にも何匹か衝突してきたので、手で顔を覆い身を低くして避けた。
静寂が戻ってきた頃、恐る恐る顔を上げる。
道の上には小さなチャンチャンコが一枚、ポツンと残されているだけだった。