田舎の友人から聞いた話です。
彼は田舎で工務店に勤めており、数年前のちょうど今頃の時期に、会社の持つ山へ木材を確認に行きました。
木の周りを巻尺で測り、何年か前のリストと比較してみると、かなり良い具合に木が生長しているようでした。
「この具合なら良い値段で木が売れるな」と思った彼は機嫌も良くなり、歌を口ずさみながら作業を終えて帰途に着きました。
帰りの山道を下っていると、後ろの方から人の声がします。
「材木泥棒か?」
そう思った彼は、茂みに隠れていると、声は段々とはっきり聞こえてきました。
歌をうたっているような声です。
「聞き覚えのある声だな・・」と思ったそうですが、それもそのはず、自分の声だったそうです。
自分の後ろから、声だけが歌をうたいながら追いかけてきて、隠れている彼の前を通り過ぎて行きました。
体が固まっている彼の前を通り過ぎ、声が聞こえなくなった頃、立ち上がって急いで帰ろうと踏み出した彼の耳元で誰かがボソッといいました。
「なかなか、上手いじゃないか」
彼は転げるようにして逃げ帰ったそうです。