4年前の秋頃、とある廃アパートでサバゲーをやったときの話。
やったことある人はわかると思うんだけど、サバゲーのフィールドって県ごとに1,2ヶ所くらいしかなくて、人数揃ってるならその辺の山とかでフィールド区切ってやっちゃったが早いんだよね。
当時は20人近く仲間がいたから、その辺の林やら廃屋やらを見つけてくるのが常で、問題の物件は俺が見つけてきた。
古い2階建てのアパート(退去済み)で、1階はコンクリ打ちっぱなしでやたら柱が多い駐車場。
2階は居住区で部屋は広めの1Kだか1DKくらいが6部屋。
なぜかどの部屋も扉が取り外されていて、中には畳やタンスが残ってる部屋もあった。
建物の周囲は砂利道とススキの藪で、丁度建物の下を通ってコンクリの側溝が藪同士をつないでいる感じ。
この側溝も不自然で、高さ70センチ、幅2mと大きいものの、その中央にまた幅15センチ程の側溝がついており、時折そこをちょろちょろと水が流れていくというものだった。
またその蓋(覆い?)は建物から両サイド4m程まではドデカいコンクリや鉄柵や鉄板と、不統一ながらもぴったりと被せてあってさながらトンネルの様だった。
集まったのは夜22時。
過去に浮浪者が居たことあったので軽く見回りをした後、陣地を双方側溝の蓋が途切れた辺りに決めて、8対8+審判1で開戦。
私は1戦目審判で、唯一の建物の入口である外階段付近に立って「どうせ暗くて見えねーし審判もう一人くらい欲しいなー」なんて思いながら突っ立ってる間に、あっさりと白側が攻め込まれて終わり、2回戦、私は赤側からスタートした。
1戦目で既に側溝の奥は蜘蛛やらムカデやらの巣窟ということがわかっていた為に誰もそこは使わず、俺とAは建物の2階に隠れて俺は外を、Aは建物の中をそれぞれ担当することににした。
残念ながら、私は後から鉢合わせた敵のBと相打ちになり早々にアウト。
丁度AがCを仕留めたところだったので、3人とも陣地に戻るかとAに「一旦戻るわー」と声をかけたところ、数瞬前まで後ろにいたAがいない。
一応声を掛けてから行こうと、隣の畳の残された部屋を覗くと、暗がりに誰かいたので何と言ったかまでは覚えていないが、その人影に向かって声をかけた。
その途端隣にいたBが顔をそちらに向けたまま「ヒョッ」だか「ホッ」だかいう声を上げて腰を抜かした。
手を貸そうとした俺も違和感を感じてそちらを凝視する。
Aはスポーツ刈りにキャップを被っていたが、そいつはパーマのかかった髪を肩まで垂らした人相の悪い男だった。
『やべぇ人いた。メッチャ睨まれてんじゃん』・・・なんて思いながら、「すいません」と言った後、何と続けようか思考を巡らせていると、Cから強めのビンタを貰い、Bもろとも外階段にいる審判のとこまで引っ張っていかれた。
あまりに強引なCの態度に腹を立てて、強引に腕を振り払って詰め寄ると、開口一番「お前、誰に話しかけてたんだ?」と。
意味がわからないとBに助言を求めたところ「お前、よくあんなのに謝れたな」などと言われる始末。
更に追撃の「だってアイツ浮いてたじゃん」と。
どうやらBは「浮いて髪を振り乱した鬼みたいな奴」が見えていたらしく、反対にCは暗闇に向かって異常な行動に出た俺と、同じくを凝視したまま座り込んでいるCに恐怖を覚えたらしい。(俺達2人を捨てずに引っ張っていってくれたCの勇気に感謝)
これを俺も理解しながらだが審判に説明して「もしほんとに人がいたら危ない」ってことで中止になり、「Aがまだ中にいるから」と嫌がるBを連れて4人で中へ入ろうとしたところ、陣地防衛組と一緒にクモの巣だらけのAが来た。
防衛組の話によると側溝から自陣の方に這い出してきたらしい。
ちなみにこのとき2階からの唯一の出入り口である外階段そばの審判と、2ヶ所しかない入口の双方に3人ずついた防衛組に見られずに「どうやって入ったのか?」という話に当然なったが、A曰く「畳の部屋のタンスの影に身を潜めていたところ、急に立ち上がれないくらいの高さに天井がきて、必死に這い出たら自陣だった」らしく本人が一番よくわかっていないという状況だった。
もちろんこの後全員で2階を回ったが、先述の通り唯一の出入り口である外階段に我々4人がいたにも関わらず誰も居なかった。
この話は今でも仲間内で「テレポート幽霊」として度々話に上がる。
この後半年たたずにこのアパートは取り壊されたんだけど、跡に建ったまずいラーメン屋も2ヶ月ほどで店長が失踪。
今はただの駐車場になってる。
何が洒落にならないかって、これ俺が見つけただけあって実家からここまで直線で50メートルと離れてないのよね。
道向かいの家1軒挟んで向こうだし・・・。