※このお話には【後編】があります。
私の父は北海道の神社をしていた家系でハッキリと見える人。
母は感が鋭く、誰かが入院したなど聞くと「○月△日、◎時頃に亡くなる」と言い、実際、何回も当たったことがある。
ちなみに、母も見える人。
私は両親の血を継いだのか、見えるし感は鋭いし、小さい頃から世界を色で見ていた。
例えば、気の合わない人は赤、本能的に好きになる人は青、一緒にいて安心する人はオレンジ、のように、空の色や、水の色も視覚的に見たものと、感覚的に見たものではまったく違う、変な感覚の持ち主。
誰かが死んだ場所には色があって、それが時代によって違ったりする。
青は平成、昭和はセピアっぽかった、大正はコントラストが高めだったり。
そんな私は、某大手チェーンのカフェで働いているのだが、去年から喫煙席が変に暗くて誰かがいる。
一番奥の席、そこに女の人が座ってた。
色は青。
きっと平成に亡くなった方だと思う。
それを私だけが見ているならまだしも、一緒に働いている友達も、『そこになにかがいる』、と言う。
まあ、なにかしてくる様子もなかったから無視してたんだけど、たまに、ガタガタと動いたりする。
でもやっぱり、そんなに気にならなかった。
だってなにもしてこないから。
まあそんなこんなで、特になにもされることなく、店が改装した。
その女性がいたところは、照明が変わり随分と明るくなった。
女性の陰は、少しだけ薄れた気がするなぁ、と思ってたんだけど、新しく出来た喫煙席に6人くらい新入りが増えた。
まあ今回の話の主役はその6人ではないから、今回は話しません。
私はその新入りに目をとられ、女性を気にすることがなくなったの。
でも一昨日、その女性が明らかにおかしかった。
いままではジッと座ってたのに、立ってた。
しかも、歩いてるの。
前には進んでないけど、体が左右に揺れてる。
ジワジワと、近づいてくる感じ。
でもまあ、いままでなにもしてこなかったから、と、その日は少し怖いなぁと感じながらも店を出た。
それで、昨日いつものように店に入ったら、その女性と目が合った。
ということは、その女性の場所が移動した、てこと。
いままで女性のいたところは、入り口からじゃ見えない、一番遠いところ。
それでも昨日行ったら、入り口から入ってくる私をジッと見てた。
赤黒くて、睨むみたいに私を見てる。
私は慌てて店を出て、色んな人に電話をかけまくった。
気が狂いそうだった。
逃げたかったけど、仕事あるし、とどこか冷静で。
でも店に入ることはできなかった。
何人も電話した。
そしたら、母にやっと電話が繋がった。
私はワンワン泣きながら母に「怖い怖い」と言い続けた。
実際死ぬほど怖かった。
入り口から2mほど離れた従業員用駐輪場にしゃがみ込んで、泣きながら電話をする。
そしたら母が、「あんたなにしたの!!!その声は誰!!!!」と怒鳴りだした。
その声?
私以外その場にいない、と思い、顔を上げたら、女性が店の中に立って、私を見ていた。
入り口は全部ガラス張りだから、ハッキリ見えた。
私は、「なんでいるの!?」、と金切り声で叫ぶ。
もちろん通行人もビックリ。
母は「すぐに行くから待ってなさい」、と言うけど、こんな所で待ってるなんて正直無理。
足がもつれながらも店から離れ、近くの某ファストフードのビルの隙間に座り込んだ。
後編へづつく。