皆の中でタブーになった話

カテゴリー「不思議体験」

教習所の教官から聞いた話。

昔働いていた教習所に後藤さんと言う同僚がいた。
かなりのイケメン。
教え方はクールで素っ気なかったし、既婚者だったが、生徒から人気があり指名が凄かったらしい。

ある年のバレンタイン。
毎年恒例で大量のチョコを貰う後藤さん。
告白されている姿もチラホラ。
同僚達はそれをニヤニヤ見ていたらしい。

その次の日。
出勤時間を過ぎても後藤さんが出勤して来ない。
同僚達も心配して携帯にかけたり、家電話にかけたりしたが繋がらない。
一番仲が良く、家にも遊びに行った事があるこの話をしてくれた教官が前に後藤さんの奥さんの番号を聞いたのを思い出し、空き時間に電話をしてみた。

教官:「もしもし。俺。久しぶり」
奥さん:「あー久しぶり!」

教官:「なあ、後藤は?」
奥さん:「・・・・・・死んだよ」

教官:「え?」
奥さん:「死んだってば!」

ブチッ。
という感じで切られた。
わけのわからない教官は勤務終了後に後藤さんのアパートを訪ねてみた。

電気も付いておらず、鍵もかかっている。
中を覗くと後藤さんの趣味だった、レコードとかフィギュアとか洋服とかが全てなくなっている。

というか、家具も何もかも無く全くの空き家状態。
驚いた教官が隣人や大家、不動産屋に聞いてみると全員が口を揃えて「そこはずっと空き家」だと。

腑に落ちないまま、次の日出勤し校長に「後藤引っ越したみたいです」と話すと校長は「え?後藤?」と首を傾げた。
何度も後藤が後藤がと話すが「そんな奴知らない」と。

驚いた事に同僚全員が校長同様、後藤さんを忘れていた。
呆然と喫煙所でタバコを吸っていると、3人くらいのの女子高生がやってきてその中の一人が「今日、後藤さんお休みですか?」と。
ビックリして教官は後藤さんの事を女子高生に聞いてみたが、3人のウチその子だけが後藤さんを覚えていた。

その後、後藤さんを覚えている生徒が何人かいたが、教官達全員が覚えていない為、いつの間にかタブーになっていった。

教官は数年前に結婚して、昔いた教習所からかなり離れた所に移り住んだので、今はどうなったとかわからないが、バレンタインになると思い出すそう。

結構、知ってる人多いかもだしバレるかも。
というか、教官が説明ベタ過ぎて一応まとめたけど、実際と違うかも。

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