小学生の頃、通学路で迷子になったことがある。
集団下校していたはずだったのに、気が付いたら何故か先生も友達も誰もいなかった。
周りを見回すといつもの道のようなんだが、なんだか何か違和感を覚えるような気がして、それもそのはず。
俺の家は近所でも目立つ大きいマンション。
いつもは小学校からでも見えるのに、それがどこにも見当たらない。
マンション名を言えば地元の人はすぐ分かるくらいには有名だから聞こうと思ったら、
広くて見通しの良い道なのに、誰一人として人がいない。
もう何をしていいか分からなくなって泣きながらとぼとぼ歩いていた。
別の道に出たら人が何人か前から歩いてきてた。
サラリーマンのおっちゃんとかに「すみません、迷ったんです」って泣きながら声かけて、そしたらこっち見ることもせずスタスタ歩いて行っちゃった。
次の人も同じ。
もう無我夢中で「○○(マンション名)どこですか、迷子なんです」とか言い続けても誰も反応してくれなくて、ずっと泣きながら声かけ続けたら、やっと一人のお姉さんが気づいてくれた。
かがみこんで頭撫でて「どうしたの?」って言ってくれたから「○○に帰りたいんですけど迷ったんです」って言ったら、あろうことかお姉さん、俺の真っ正面(つまりお姉さんから見れば真後ろ)指さして「あれじゃない?」って、そこで初めてマンションが見えてることに気付いた。
何度もお礼言ったら「今度は迷わないようにね!」ってまた頭撫でてくれて、ようやく家に帰れた。
先生にも親にもめちゃくちゃ心配されたけど、帰れた喜びで始終びーびー泣いてた。
ここまでならただの迷子話なんだが、つい最近うちの親に「そういえばあんた昔迷子になったよね、担任の先生たちと一時間以上探したのに見つからなくてさー」なんて言われておかしいと思い始めた。
上に書いた通り俺は見通しの良い道にいたし、黄色帽子とランドセルの小学生が誰もいない通りにぽつんと立ってたらどう見ても目立つ。
当時うちの小学校は5クラスあったから母親含め6人。
小学生の足で、走ってもいないからそんなに遠くにも行けないはずなのに、大人6人で一時間以上かけて見つからないのはどう考えてもおかしい。
当時は混乱してたから何も思わなかったが、集団下校中に突然誰もいなくなるのもいつも見えるはずのマンションが見えないのもおかしいし。
泣きながら道教えてください、と言ってくる小学生を無言スルーする大人がそんなに沢山いてたまるか。
今でもよくわからないまま記憶に残ってるけど、あれは何だったんだろう。
長くて申し訳ない。