小1の春休み。
初めて徳島の親戚の家に遊びに行った時の話。
畑の隅に、戸口も窓もはずされたボロ屋があり、私は好奇心につられてその家にあがりこんだ。
玄関脇の三畳間には、畳一面にどす黒いものが染みついており、壁や柱にもべたべた赤黒い手形や指の跡がついている。
あまりの気味悪さに「工事の土だ」と自分を納得させたのだが、その日の夕方から腹痛が始まり、下腹に筋肉割れのような筋が何本も走った。
親戚のおばあさんはそれを見て、「○○ちゃん、あの家に入った?」と。
私:「入った」
すぐに祈祷師のような太ったオバサンが呼ばれ、拝んでもらって、腹痛は治まった。
あとで聞いたところでは、日本が戦争に負けた時、その家の三畳で切腹自殺した男性がいたのだそうだ。
介錯なしの切腹だから、彼は朝まで転げ回って苦しんだらしく、壁や柱の手形指形はその時のものなのだという。