友人の話。
彼の住んでいる町は山深い場所なのだが、交通の便が良いせいか、季節によっては大勢のハイカーたちで賑わうという。
毎年のように遭難者が出ているらしい。
大抵は無事に発見されるのだが、時折運悪く死んでしまう人もいる。
遭難した者たちには、奇妙な共通点がある。
生きて還ってきた者も、死んでしまった者も、必ず一様に右足を折っているのだと。
そして決められてでもいるかのように、彼らは皆、六月に災難に見舞われている。
「実はな。あの山って、昔は姥捨てに使われていたらしいんだ。捨てた老人が帰って来られないよう、右足を潰していたんだと。町の黒歴史みたいなモンだから、知っている者もほとんどいない話だけど」
二人で久しぶりに飲んだ夜、ポツリポツリとこの話をしてくれた。