無言の中の恐怖

カテゴリー「不思議体験」

数年前の冬、彼と東北へ旅行に行った時のこと。

山形で一泊し、彼の運転でドライブを楽しみながら宮城方面へ向かっていました。

時間を気にせず、日が暮れてから山道に入り、暗い中旅館や道中の感想を話しながらドライブを楽しんでいました。

おかしなことは、話題も尽き二人とも無言になったあたりから起き始めました。

まず私の体感時間では2時間は軽く走っているのに、まだ山を抜けない。カーナビも付いていない車だったので現在地もわからず、おかしいと彼に声をかけても無視。

運転に集中してるにしても返事くらいしてくれていいのに・・・と、運転席の彼を睨むと、その奥の窓に何か白い腕ような影が見えました。

一瞬気温差で曇った部分が偶然腕のようになったのかと思いましたが、のっぺりとした印象からやはり何かの腕です。

驚いて声も出せませんでしたが、なぜか目が離せずしかも徐々にその腕は何本も浮かび上がってきて、手のひらから指までもはっきりとわかるようになってきました。

更に外が見えるはずの、つまり白い腕のない部分も同じように黒い手が張り付いていることに気づき、一瞬心が恐怖一色に。

ついに声をあげて彼に大声で話しかけるも相変わらず無視され、もしかして越えられない山と無反応の彼と窓の腕は、幽霊とか妖怪とかそういうののせいなのか?というか、そこに張り付いているのは幽霊だか妖怪だかとりあえずオカルトなのだとやっと理解した時・・・はずかしながら当時メンヘラ、もしくはヤンデレの私は、あろうことかブチ切れ、そのオカルトにありったけの罵詈雑言を唱え始めました。

彼に何かしたらぶち殺す、死んでいるならもう死ねないことを後悔するくらいぶち殺す、などと呟き心の中でオカルトをどう苦しめるか、指を千切ってまたくっつけて千切ったりあらゆる所を滅多刺しにしたり、どうせそう消えやしないんだろうから鉋でスライスしてやろうか、などと想像しながら腕の影を睨みつけていました。

ふいに車が路肩に止まって、それまで無言だった彼が私の肩を揺すってきて、ふっと何か空気が変わった感じがするとともに、窓の腕は跡形もなく・・・。

彼によると山道に入って20分くらいした時、それまで喋っていた私がいきなり寝始めたらしく、疲れていたんだろうなと思ってそのまま運転を続けたそうです。

でもすぐに妙な寝言というか、うなされてるというか、そんな状態になったので対向車とすれ違うための待避所に車を止めて起こしたのだそうです。

夢と現実の時間の流れが違うと言っても、私の体感時間は雑談をしていた時間も合わせ3時間、一方彼は私が寝てから5分かそこら。

私はいつ寝たのかもわからないし、起きたという実感も無し。

結局ちょっと悪い夢を見ていただけ、と言ってカーステレオの音量を少しだけあげて再出発してもらいました。

どこからどこまでが現実だったのか、そもそも心霊現象だったのかも分かりませんが幸いにも今の所悪意的なイメージのオカルト体験はこれくらいです。

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