うちの両親にも同じような話がある。
親父は貧乏農家の小倅で隣町の病院の裏の空き地に行ってはアンプルだの紫のフラスコだのを拾って宝物箱に大切にしまっていた。
ある時、二眼レフのネガ的な物を拾う。
光に翳すと眼鏡にスーツ姿の紳士と幼女が写っている。
何せ田舎の貧乏家庭の親父だからそのフィルムも宝物にして箱の中へ大切に保管。
やがて結婚し新居に引っ越す時、その宝物箱が出て来て母に説明しながら見せていた。
すると母は例のフィルムに反応し詳しく聞き出した。
驚いた事に写っていたのは母と満州で病院をやっていた今は亡き父親であった。
母は小さすぎて自分の父の思い出がほとんど無い。
その後、その写真は引き延ばし修正を施し仏間に飾っていた。
母は自分の父と再会した。
父は生涯の伴侶となる人の写真を10歳の頃から宝物として大切に守っていた。
まるでポールオースターの小説みたいな話だ。
うちの両親は良い所は一つも無いが、このエピソードだけは正直うらやましい。