お盆に急に休みをもらったんでふと思い立ち、ずっと音信不通だった実家に5年ぶりに帰省してみた。
電車とバスを乗り継ぎ、バス停から1時間ほど歩いてようやくたどり着く。
昔から戸締りという概念がない実家の玄関の建て付けの悪い引き戸を「ただいま~」と大きな声で言いながらガラガラ開けると、突然強烈な違和感に襲われた。
足の踏み場もないほどたくさんの靴。
それだけだったらそうでもなかったと思う。
親戚連中が集まって昼間から酒盛りしてるなんてしょっちゅうだったからね。
違和感の正体を確かめる間も無く奥から色黒な人が出てくる。
中東系かインド系かわからないけど、明らかに日本人じゃない女性だった。
日本語が出来ないらしく、どこかの国の言葉で一生懸命話しているが皆目わからない。
続いて奥から外国人の男女ばかりが10人ほど次々に出てきて口々に喚く。
圧倒されてしまい、一礼して逃げるように出てきた。
表札を見直したが自分の苗字だったし実家には間違いない。
違和感について思いを巡らせてみた。
大量にあった靴がどれもかなり派手な感じで、どこに売ってるんだか検討も付かないデザインだったこと。
玄関周りの飾り付けも同じで、どこで買うんだかわからないタペストリーとか。
そして多分一番は匂い。
甘ったるいお香か香水か、それとスパイシーな体臭っぽい匂いが混ざり合った感じ。
わけがわからないまましばらく途方にくれたが、隣家の人に事情を聞いてみようと思い立った。
隣と言っても600mほど離れてるので歩く。
「こんにちは~。ご無沙汰してます。隣のヒロシですけど~。」
「おおー!久しぶりだな~。どうしてた?元気か?」
ひとしきり近況報告をしてから実家の惨状を話す。
「え?○○さん家って3年前に引っ越したよね?」
何それ知らない!
「たしか○○県の方に引っ越したよ?知らなかったって・・・」
まだ僅かながら連絡を取ってた当時は両親は携帯を持ってなかった。
連絡を取る術もなく、終バスの時間に遅れそうなんで帰ってきた。
そんな話。