境界線を彷徨う人

カテゴリー「不思議体験」

知り合いから言われた事をもとにしているからどこまで本当かわからないけど・・・。

世の中には境界線があるらしい。
この世とあの世を隔てる非物理の白線みたいなものらしい。

あちら側に傾倒しすぎた人間は「引きずり込まれる」らしいし、こちら側に傾倒した人間はあちら側を一切関知できない。

その代わりあちら側からの被害も届かないらしいけど。

じゃあ世の中で言うところの霊能力者ってなんじゃって聞いたら、「境界線の真上にバランスよく立ってる人」らしい。

そのバランスがあちら側に傾く、というより引っ張られて倒れたらもう助からないから、そんなのを職業にしているのは命知らずか恐れ知らずだけらしい。

偽物の話をしたら、遅かれ早かれ境界線の向こう側に引きずり込まれる恐れ知らずだそうだ。

いわゆる「見える人」の大半は、こちら側に全身を置いて顔半分をあちら側に置いているらしい。
その話を信じるなら、俺は毛先だけあちら側にあるような中途半端な位置らしい。

中途半端と言ってもこの程度はかなり多いらしく、日本みたいな「神様が身近」な国では珍しくないとか。

要するに「見えないけれどいるのはわかる」程度。
俺の場合はそういうのを感じたときは、背筋を逆なでられるような感じで鳥肌が立つ。
へその対になる背中から首にぞわぞわと上がってくる感じで。

前置きが長くなったけど、この感覚はよくある。

過去に一度だけ全身で「やばい」と感じるほどの感覚が来たことがあった。

瑕疵物件てのあるだろ?
当時住んでいた家の近所とは言わないけれど、同じ学区内くらいのところにそういうのがあった。

子供たちの間では肝試しに行こうとして怒られるまでがセットの場所だったし、実際普通に不動産会社が管理してたから、子供とはいえ忍び込んだら警察の厄介になりかねないから。

その家は近づくだけでゾワッとするから通勤路も変えていたくらいだったんだけど、ある時壮絶な不快感とぞわぞわした感じになった。

聞けばその家にある家族が引っ越してきたらしいんだけど、それ以来街のどこを歩いても鳥肌が収まらなくなった。
病院にはもちろん行ったけど異常なし。

これってまさかなーと思って、その友人に連絡してみたら面白そうだから遊びに行くわと言われた。

で、約束の当日。
友達からメールが届いた。

その内容は今でもはっきり覚えてるけど、「ごめん、行けない。つーか行きたくない」だった。

どういうことかと聞こうと思って「じゃあ俺が行くわ」って返事をして、車で30分くらいのとこにあるファミレスで話をしたんだが、曰く、「町全体が幽霊屋敷みたいになっている」って言われた。

町のいたるところに厄介な部類の、境界線の向こう側に引っ張り込むタイプの奴らがうようよいるとかなんとか。

最初は普通に怖がってたんだけど、まさかそんなことないだろって思ってた。

けど近所の子供たちが「おばけを見た」と言い出したり、大人たちが「神社の御神体である鏡が割れた」だとか言っているのを聞いているうちにマジで怖くなって、引っ越しを視野に入れはじめた。

結局ひと月くらいかかったけど、町を離れる事が出来たから俺は何にもなかったけど、今でもその町に住んでる友人の話を聞くと色々怪談話が出てくる。

そいつは「気が滅入る」と言ってた。
それから、問題の瑕疵物件については、「その家を買った家族はまだ住んでいる」とだけ聞いた。

町全体が幽霊屋敷みたいになるような何かがあったのか、気になっているけど友人は町に近づきたがらないからわからない。

引っ張られる、っていう表現が俺にもよくわからないんだ。
こちら側にいると言っても死ぬときはあっさり死ぬし、あちら側に半身突っ込んでいようとも天寿を全うする事もあるらしい。

友人曰く「綱引きに近い」とか言ってた。

俺が感じる背筋逆なでの鳥肌は「危険察知」に近いらしい。
大なり小なり持っている第六感の一つらしいんだけど、それが必ずしも危険なものではないとも言われた。

目の前を虫が通ったら無害だろうが有害だろうが一瞬視線を奪われるのと同じらしい。

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