これは私が高校生の頃の話です。
日本海沖地震が起きた翌年。
私は友人達と男鹿半島まで釣りに行きました。
男鹿の磯場に行き「何が釣れるかな~?」などと友人達と話しながら釣り糸を垂らし始めました。
10分~15分程たった頃。
私の釣り竿にかなり大物な感じの当たりがきました。
「うぉっ!すごい当たりだや!!」
そう声を上げながら釣られてくるであろう大きな魚に期待しつつ、15分間釣竿と挌闘していました。
しかしヘンなんです。
釣竿の引きが全然弱ってくる気配が無いのです。
だいたい磯場での釣りで釣り上げるのに15分以上かかるような大物なんてそうそう釣れる事はありません。
「何かヘンだな~」
そう思いつつも釣り上げようとしていると急に引きが無くなってしまいました。
針を上げてみると、餌が付いたままで魚が噛み付いた後もありません。
「おかしいな~、なんか魚かかった感じじゃないよ、これ。」
そういう私に友人は「きっと何かヘンな物ひっかけたんじゃないの?」と言いましたが、引きが漂流物のものではありませんでした。
釈然としないまま、再び釣り糸を垂れましたが、5分もしないうちにまた同様の事が私や友人達にも起こりました。
何度釣り糸を垂らしても同じ事が起こり気持ち悪くなってきましたが、交通費をかけて折角来たのに1匹も釣らないで帰るのも癪だったので、せめて1匹釣るまでは頑張る事にしました。
何度めかのキャストの時、今までの倍くらいの強さの当たりがきました。
「おっしゃ~!これは絶対に釣り上げるぞ~!」と叫んで釣りはじめる私。
30分以上の駆け引きの末、なんとか水面近くまで上がってきた感じだったので引きが弱くなったところを半ば強引に釣り上げようとしました。
一瞬、釣り糸を引いていた物がみえましたが、見えた瞬間釣竿が折れてしまい海の中へと沈んで行ってしまいました。
私達はすぐに釣りを止めて帰路につきました。
もうここには絶対に釣りにこない、と思いながら・・・。
だって、私達が見た釣り糸を引いていた物というのは無数の子供の腕だったんです・・・。
考えてみると私達が釣りをしていた場所は日本海沖地震の時に磯辺で遊んでいた遠足で、男鹿に来た小学生32人が津波にのまれて全員溺死した場所のすぐ近くでした。
もしかしたらその小学生が出てきたのかもしれませんね。